2018年02月02日

自己紹介

皆様、初めまして。
新人弁護士の井上功務(いさむ)と申します。
この度は、今年の1月から弊所に勤めることとなりました。

私は、名古屋で生まれて、名古屋で育ち、そしてこの名古屋の地で弁護士活動をさせていただけることになりました(南山大学法学部卒業、名古屋大学法科大学院修了)。
2017年でに取られたアンケート結果ですが、名古屋は残念ながら「最も行きたくない街1位」という不名誉(?)をうけることとなった街ですが、私自身は名古屋が大好きです。
名古屋は人口が多すぎず少なすぎず、物はしっかり揃っていますし、地下鉄などの鉄道も揃っていどこに行くにも便利でし、ご飯は美味しいです。住むのには本当に良い環境が揃っていると思います。
名古屋の人は地元愛が強いと県外の周りの人からはよく言われますが、私もその一人かもしれません。
名古屋に根を下ろしながら、少しでも困っている人の力になれたらな、と思っております。

IMG_0005.jpg私の趣味は、愛犬のお世話です。我が家の愛犬は黒柴の女の子で名前は「りん」と申します。やんちゃでいたづらが好きな子ですが、そんなところかわいいと思ってしまう私は親馬鹿ならぬ犬馬鹿ですね。りんとのお散歩やボール遊びで日々癒やされております。

私は、弁護士業務を初めて一ヶ月ほど経ちますが、その責任の重さとともにやりがいも感じております。
弁護士として皆様に寄り添いながら、少しでも皆様のよい未来を創造していきたいと切に願っております。

今後、皆様に信頼される弁護士を目指し、日々研鑽に努めて参ります。
何卒、よろしくお願い申し上げます。
posted by 金山総合法律事務所 at 14:36| スタッフより

2018年01月27日

日本は114位

両性の平等
          日本は114位

毎年10月、世界経済フォ−ラム(WEF)が「国際男女格差レポート」でジェンダーギャップ指数を発表しています。
2017年10月の発表では、日本は144ヶ国中114位でした。
上位10位を見ると、1位アイスランド、2位ノルウェイ、3位フィンランド、4位ルワンダ、5位スウェーデン、6位ニカラグア、7位スロベニア、8位アイルランド、
9位ニュージーランド、10位フィリピンです。
 ちなみにいわゆる先進国を順位をみると、
 フランス11位、ドイツ12位、カナダ16位、スイス21位、スペイン24位、ポルトガル33位、アメリカ49位、ロシア71位、イタリア82位、中国100位となっています。
 日本が114位というのが如何にかけ離れて低位か、一目瞭然ですね。

今回の発表ではマスコミも大きく取り上げていますが、それは日本の女性差別が各国の状況に比較して良くなっていないことがはっきりしたからです。

 日本の順番をみてみましょう。
  2006年   80位
  2007年   91位
  2008年   98位
  2009年  101位
  2010年   94位
  2011年   98位
  2012年  101位
  2013年  105位
  2014年 104位
 2015年  101位
  2016年  111位
  2017年  114位

 つまり日本の女性の地位は良くなっているどころか、悪くなっているのです。
 ちなみに日本が100位以下に安定したのは、2012年からですが、今の第2次安倍内閣が2012年12月に登場した時となぜか一致しています。
 安倍首相は就任以来、「女性が輝く」ことをしきりに言っていますが、むしろ女性は「太陽から月に戻った」という感じすらあります。

このように日本の地位を下げた原因は、4つの分野、つまり、経済活動の参加と機会(Economic Partipation and Opportunity)、教育(Educational Attainment)、健康と生存(Health and survival)、政治的影響力(Political Empowerment)のうち、主に2つです。
 「経済的活動」については114位、「政治的影響力」は123位という低さでした。
他の「教育」については74位、「健康と生存」は、なんと1位でしたから、特に政治的影響力の低さは世界に恥じるべきでしょう。

日本は憲法の前文で「国際社会で名誉ある地位を占めたいと思う」と宣言しました。 このジェンダーギャップランキングで、日本がこのような不名誉なランク付けをされたことについて一体政府はどのように考えているのか、聞いてみたいものだと思います。

 なお、このWEFのレポートやランキング表は誰でもネットで見ることができます。

                         弁護士 渥 美 玲 子
posted by 金山総合法律事務所 at 16:08| 両性の平等

「逃げ恥」と家事の対価

          「逃げ恥」と家事の対価
弁護士 渥 美 玲 子
「逃げるは恥だが、役に立つ」というドラマが人気を博し、東京ドラマアワード賞やコンフィデンスアワード賞など多くの賞をとりました。
このドラマの興味深いところは、は35歳の独身男性(星野源)が、25歳の独身女性(新垣結衣)と契約結婚し、契約妻を住み込みで家事をさせ、対価として賃金を支払うというものです。法的には雇用契約ですね。そのためこのドラマでは「家事労働の対価」が大きな話題になりました。
 もちろん、このドラマは妻と称する女性に家事の対価としての賃金を支払うだけの余裕のある収入を得ている独身男性が主人公になっているので、そのような経済力のない男性には、あまり関係のあることではないでしょう。しかし、妻を専業主婦としている夫や、専業主婦として忙しい毎日を働いている妻にとっては、いろいろ考えさせることになったようです。

 ドラマの中で独身男性、つまり契約夫が対価を試算したときの台詞は次のようなものだったそうです。
「試算してみたんです。家賃、水道、光熱費等の生活費を折半した場合の収支。食事を作ってもらった場合と外食との比較。毎週家事代行スタッフを頼んだ時との比較。そしてOC法に基づいた専業主婦の家事労働時間は年間2199時間になります。それを年収に換算すると304万1000円。そこから時給を算出し、1日7時間労働と考えたときの月給がこちら。契約妻の生活費を差し引いた手取りがこちらで、健康保険や扶養手当を利用した場合の試算をしてみました。」
この結果、月給は19万4000円ということです。

ところで、台詞にでてくる「OC法」とは、内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部で無償労働の貨幣評価をおこなう際に用いる算出方法の一つで、機会費用法(Opportunity Cost method)というものです。説明によれば「家計が無償労働を行うことによる逸失利益で評価する方法である。無償労働を行った者の賃金率を使用するため評価額には、男女間の賃金格差などが反映し、無償労働の内容ではなく、誰が無償労働を行ったかで評価が変わりうる。賃金換算の際には厚生労働省:賃金構造の基本統計調査の産業計(性別・年齢階層別)所定内平均賃金率を用いる」とされています。
つまり、性別による賃金率を採用するということは、日本における男女賃金格差をそのまま採用するので問題があるのです。ちなみに、2014年(平成26年)の賃金センサスをみると、35歳の男性の平均賃金は年収(毎月決まって支給する現金額+年間賞与額・その他特別給与額)にして527万6100円、25歳の女性のそれは341万9300円です。なお、35歳の女性の場合の年収は381万9700円ですから、相当に男女格差があります。
なので台詞で「年収に換算すると304万円」というのは、賃金額が男性よりも低い女性の場合、つまり女性差別を前提とした数字でしかありません。

もうひとつ、台詞で出てくる「専業主婦の家事労働時間2199時間」ですが、年間2199時間の労働は結構長いのです。厚生労働省の「女性労働の分析−2015年」によると、女性常用労働者1人平均月間総実労働時間(所定内労働時間+所定外労働時間)は124.8時間、男性の場合には160.7時間です。これを1年間に換算すると、女性は1497時間、男性は1928時間となって、年2199時間の労働は男性の労働時間よりも約270時間も長い長時間労働なのです。契約夫と契約妻は36協定も結ぶ必要がありますね。しかも、労働基準法では、時間外労働をした場合には割り増し賃金が支払われることになっているので、単純に時給×労働時間という計算は間違ってることになります。

なお、平成25年6月に公表された内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部の「家事労働等の評価について−2011年データによる再推計」では、2011年の無償労働の貨幣評価額について、「OC法では女性の場合、専業主婦の無償労働評価額がもっとも高く、1人当たり年齢平均では304,1万円。1人当たり無償労働時間は、女性の場合、専業主婦は2199時間」と記載してあるので、ドラマでは、この論文を参考にしているものと思います。

また、上記の契約夫の台詞では「1日7時間労働,年間2199時間」と言っているので、計算してみると、2199時間÷7時間=年間314日働くことになっています。週休完全2日の企業が多いことを考えると、1年間53週のうち夏季休暇や年末年始休暇などを除外しても、2日×53週=106日は休日ですから、年間の労働日数は365日−106日=259日しかありません。つまり契約妻が働くことを予定されている年間労働日数314日というのは、休日労働することを予定されている日数なのですね。
なお、1時7時間ではなく1日8時間労働で計算したとしても、年間274日働くことになるので、やはり休日労働が予定されていることになります。

また住み込みであれば、実際に1日7時間という区切りが困難で、例えば、契約夫が残業で帰宅が遅くなり夕食時刻が遅くなるとか、夜中に病気になったときには医者に連れて行き看護するなどの場合も想定できます。またこのドラマでは子供はいないので、仮に契約夫に子供がいて育児の必要性があることなども考えると、育児の評価もしなければなりません。家事労働の評価は本当に難しいですね。
女性の多くが担っている家事労働をどのように可視化して、経済的評価をするべきなのでしょうか。これからきちんと議論されるべきだと思います。

ただ、私にはこのドラマの題名「逃げるは恥だが役に立つ」という意味が分からず、調べたところ、ウィキペディアには「恥ずかしい逃げ方だったとしても、生き抜くことが大切」という意味だと書いてありました。しかし、このドラマの2人の生き方のどこが恥ずかしいのか私には分かりませんでした。
以 上
posted by 金山総合法律事務所 at 14:40| 両性の平等

性暴力に関する刑法改正と付帯決議

         性暴力に関する刑法改正と付帯決議
                
弁護士 渥 美 玲 子

去年のことになりますが、性暴力についての刑法が2017年6月16日に改正され、同年7月13日から施行されました。

第176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以 上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対しわいせつな行為をした者も同様 とする。

第177条
  13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交または口腔性交(以 下、性交等)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
  13歳未満の者に対し性交等をした者も同様とする。

第178条
1 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、または心神を喪失させ,若しくは抗拒不  能にさせて、わいせつな行為をした者は第176条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、または心神を喪失させ、若しくは抗拒不  能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

第179条
1 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力がある  ことに乗じてわいせつな行為をした者は、第176条の例による。
2 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力がある  ことに乗じて性交等をした者は、第177条の例による。

以上の他、第181条(強制わいせつ等致死傷)、第229条(親告罪)、第241条(強盗・強制性交等及び同致死)などの条文も改正されました。

 ところで、あまり知られていませんが、衆議院や参議院では「刑法の一部を形成する法律案に対する付帯決議」として次のような決議がなされ、特に参議院での付帯決議は9項目もありました。ただ、実はその後この付帯決議がどのように実施されているのか、積極的には公表されていないようです。
 ちなみに参議院での2017年6月16日の付帯決議が次のようなものでした。

「政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をするべきである。
@ 性犯罪は、被害者の心身に長年にわたり多大な苦痛を与え続けるばかりか、その人格や尊厳を著しく侵害する悪質重大な犯罪であって、厳正な対処が必要であるところ、近年の性犯罪の実情等に鑑み、事案の実態に即した対処をするための法整備を行うという本法の適正な運用を図るため、本法の趣旨、本法成立に至る経緯、本法の規定内容等について、関係機関等に周知徹底すること。
A 刑法第176条及び第177条における「暴行又は脅迫」並びに刑法第178条における「抗拒不能」の認定について、被害者と相手方との関係性や被害者の心理をより一層適切に踏まえてなされる必要があるとの指摘がなされていることに鑑み、これらに関連する心理学的・精神医学的知見等について調査研究を推進するとともに、これらの知見を踏まえ、司法警察職員、検察官及び裁判官に対して、性犯罪に直面した被害者の心理等についての研修を行うこと。
B 性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の過程においては、被害者のプライバシー、生活の平穏その他の権利利益に十分配慮し、偏見に基づく不当な取扱いを受けることがないようするとともに、二次被害の防止に努めること。また、被害の実態を十分に踏まえた適切な証拠保全を図ること。
C 強制性交等罪が被害者の性別を問わないものとなったことを踏まえ、被害の相談、捜査、公判のあらゆる過程において、被害者となり得る男性や性的マイノリティに対して偏見に基づく不当な取扱いをしないことを、関係機関等に対する研修等を通じて徹底させるよう努めること。
D 起訴・不起訴等の処分を行うに当たっては、被害者の心情に配慮するとともに、必要に応じ、処分の理由等について丁寧な説明に努めること。
E 性犯罪が重大かつ深刻な被害を生じさせる上、性犯罪被害者がその被害の性質上支援を求めることが困難であり、その被害が潜在化しやすいという性犯罪被害の特性を踏まえ、第三次犯罪被害者等基本計画等に従い、性犯罪等被害に関する調査を実施し、性犯罪等被害の実態把握に努めるとともに、被害者の負担の軽減や被害の潜在化の防止等のため、ワンストップ支援センターの整備を推進すること。
F 刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成28年法律第54号)附則第9条第3項の規定により起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置についての検討を行うに当たっては、性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の実情や、被害者の再被害のおそれに配慮すべきであるとの指摘をも踏まえること。
G 児童が被害者である性犯罪については、その被害が特に深刻化しやすいことなどを踏まえ、被害児童の心情や特性を理解し、二次被害の防止に配慮しつつ、被害児童から得られる供述の証明力を確保する聴取技法の普及や、検察庁、警察、児童相談所等の関係機関における協議により、関係機関の代表者が聴取を行うことなど、被害児童へ配慮した取組みをより一層推進していくこと。
H 性犯罪者は、再び類似の事件を起こす傾向が強いことに鑑み、性犯罪者に対する多角的な調査研究や関係機関と連携した施策の実施など、効果的な再犯防止対策を講ずるよう努めること。  」

まず重要だと思ったのは、この付帯決議は「政府及び最高裁判所」宛てになっているということです。性暴力については、行政だけでなく、なによりも司法が従来の扱い方についてしっかり反省して、犯罪の意味を認識しなければならないということでしょう。ちなみに第1項については衆議院の付帯決議では「関係期間及び裁判所の職員等に対して周知すること」となっています。各裁判所の職員に対して周知徹底はなされたのでしょうか。第2項についても「司法警察職員、検察官及び裁判官に対して性犯罪に直面した被害者の心理などについてこれらの知見を踏まえた研修を行うこと」とされていますが、裁判官に対する研修はどのような内容がどのような方法にて実施されたのでしょうか。
最近のニュースをみると、例えば伊藤詩織さんが告発した準強姦罪については不起訴処分となったということですが、第5項の「起訴・不起訴等の処分を行うにあたっては、被害者の心情に配慮するともに必要に応じ、処分の理由等について丁寧な説明に努めること」とあるにもかかわらず、実際はどうだったのか、などの疑問もわいてきます。
また昨年10月の座間市9人殺害事件ではマスコミは被害女性全員の年齢や氏名を顔写真付きで公表しました。被害女性は殺人だけではなく性暴力も受けていたとの可能性もあったことから、第3項の「性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の過程においては被害者のプライバシー、生活の平穏その他の権利利益に十分配慮し」とされている規定が無視され、被害者家族の心情に対する配慮が欠けていたのではないかとの疑問もあります。
・・・などなど実施状況について、いろいろな疑問が出てきますが、実施状況をチェックする体制がどのようになっているかも不明ですね。
今回の刑法改正が、どれだけきちんと司法に理解されるのかを、チェックする責任は、我々市民にもあるかもしれないと思います。
以 上
posted by 金山総合法律事務所 at 14:33| 法改正

2017年06月12日

労働基準監督署が大変!

       労働基準監督署が大変!!
弁護士 渥 美 玲 子

労働者の生活と健康、そして権利を守る一番基本の法律は、労働基準法です。
憲法27条の2項には「賃金、就業規則、休憩その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定していますが、この法律こそが「労働基準法」(短く、労基法と言っています)なのです。
 ここでいう「勤労条件に関する基準」とは、労働者からみて「最低の基準」を意味するのであって、当事者間で決められる労働条件については、法律で最低の基準を定めて、その最低を下回らないように制限するという趣旨です。つまり、使用者にも労働者にも「契約の自由」はあるものの、勤労者の利益や権利を守るために、国家の権力によってその自由を制限するということなのです。

このように国家が介入しているため、労基法13条では「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする」と規定しています。このような効力を「私法的効果」と言っています。また労基法117条以下では、法令に違反した場合の罰則を定めています。例えば、労基法5条(強制労働の禁止)に違反した場合には、使用者に対し1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処せられます。このような効力を「刑事的効果」とも言っています。
 そして労基法を遵守させるための重要な行政機関として、労基法101条では「労働基準監督官は事業場、寄宿舎その他の付属施設に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、または使用者もしくは労働者に対して尋問を行うことができる」とし、さらに同法102条では「労働基準監督官は、この法律違反の罪について刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う」として、非常に強い権限を与えているのです。

このような労働者のための規制は、労働者にとっては真に必要なのですが、どうやら安倍首相には邪魔なようです。

 2017年3月9日、規制改革推進会議は、長時間労働などに対する監督を強化するために、労働基準監督業務に民間活用を行うことを検討することとし、それに向けて、会議の作業部会として「労働基準監督業務の民間活用タスクフォース」(主査八代尚宏昭和女子大学グローバルビジネス学部特命教授)を設置することを決定しました。
規制改革推進会議とは、以前にあった「総合規制改革会議」や「規制改革会議」を引き次ぐ組織で、2016年9月2日、第2次安倍内閣により設立が閣議決定されたものです。内閣府設置法及び内閣府本府組織令に基づき「経済に関する基本的かつ重要な政策に関する施策を推進する観点から、内閣総理大臣の諮問に応じ、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方の改革に関する基本的事項を総合的に調査審議すること」を目的としています。
労働基準に関する規制を改革する必要が生じた場合には、本来は厚生労働省が主管になって調査提言を行うはずですが、国家戦略特区と同様に、直接、内閣総理大臣が規制緩和したり規制をなくすことができるようになるという仕組みです。

 このタスクフォースは、2017年3月16日から検討を開始し、同年5月8日、「労働基準監督業務の民間活用タスクフォース取りまとめ」を公表しました。なお、文書の詳細は内閣府のホームページに掲載されています。
 「検討の必要性」としては、第1に、労働基準監督署の実施する定期監督の実施率が、総事業場に対して3%程度に止まり十分な監督が行われると言い難いこと、第2に、定期監督実施対象の事業場の違反が約70%と高い割合で推移しているとし、第3に、今後「働き方改革実行計画」を踏まえ、罰則付きの時間外労働の上限を導入する労働基準法改正法案が提出されることになっており、更なる法規制の規制強化が求められることなどの状況において、「労働基準監督署における監督業務の実効性を確保するとともに、
労働基準監督官の業務を補完できるよう、民間活用の拡大を図ることが不可欠である」としています。
さらに、「検討結果」として次のような提案をしています。
 「第1に、民間の受託者(入札により決定し、契約により、秘密保持や利益相反行為 ・信用失墜行為の禁止を義務付け)が、36協定未届事業場(就業規則作成義務のあ る事業場、同義務のない事業場)への自主点検票等(36協定の締結状況、労働時間 上限の遵守状況、就業規則の策定、労働条件明示の状況などの点検票等)の送付や回 答の取りまとめを行い、指導が必要と思われる事業場や回答のない事業場等について、 同意を得られた場合に、労務関係書類等の確認及び相談指導を実施すること、
  第2に、労働基準監督官は、これらに応じなかった事業場、及び、確認の結果、問 題があった事業場に必要な監督指導を実施する。」

 なお、八代主査は、民間委託先については、社会保険労務士、弁護士、公認会計士等の資格者や企業での労務経験が豊かな者等を考えているようですが、特に全国社会保険労務士連合会などは、この民間受託に非常に積極的で、「社会保険労務士の有する知識、能力、実務経験などが十分に発揮できるスキームとして評価されれば開業社会保険労務士約2万6000人が最大限対応する。」として、業務分野拡大に意欲を燃やしているようです。
 この提案を受け、規制改革推進会議は5月23日、「規制改革推進に関する第1次答申」において、36協定未届事業場であって就業規則作成義務のある事業場については平成32年度までに措置、それ以外の事業場については平成33年度以降に計画的に措置すること、とされました。

しかし、この提案にはいくつかの問題点があり、とても賛同できるものではないと思います。
第1に、労働基準監督官の人員不足の原因です。
 提案では、「総事業者数に対する定期監督業務の実施率が3%程度にとどまっており、事業場に対する十分な監督が行われていない」ということについてですが、タスクフォースは、そのような事態になった原因をまったく分析していません。

タスクフォースの資料でも明らかにされていますが、2016年における日本の労働基準監督官数は3241人ですが、雇用者1万人当たりの監督官の数は、ドイツ1.89人、イギリス0.93人、フランス0.74人に対し、日本では0.62人であり、先進国の中ではアメリカ0.28人に次ぐ低さで、ILOが求めている基準に達していません。 ちなみにILOが求める水準は、「労働監督官1人当たり最大労働者数1万人とすべき」(2006年11月ILO理事会)ということになっています。2016年における日本の労働者数は5757万人ですから、労働監督官は約5700人は最低必要だと言うことになります。

 ところで、日本ではILO基準に従って労働監督官が採用配置されているのでしょうか。タスクフォ−スの資料にも掲載されていますが、労働基準監督官の定員数は、平成28年度は3241人となっていて、到底ILO基準を満たすものではありません。他方で、労災補償業務を担当する事務官や労働安全衛生業務を担当する技官など他の労働基準監督署の職員の定員数は平成28年度1628名と、平成9年度の2323名から大きく減少しており、労働基準監督署全体の定員数は減少傾向になります。
少し古いデータですが、全労働総労働組合の「労働行政の現状」という資料によれば、2010年現在の労働基準監督官は約2941人(本省23人、労働局444人、労働基準監督署2474人。但し、実際に臨検監督を行う監督官は、管理職を除外するため2000人以下)ということです。おそらく2016年の実情においてもそれほど変化しているとは思えません。
 従って、事業所に赴いて定期監督などをきちんと実行するためには、労働監督官の数は、本省23人、労働局444人、労働基準監督署の管理者321人(署長のみ)の合計788人を除外して、定員数を考慮する必要があります。
このように絶対的に人数が不足しているという現状であるにもかかわらず、厚生労働省は労働基準監督官の採用数を200人程度に絞っている上、労働行政の職員数についても政府は新規採用定数を大きく制限抑制し、事務官や技官の新規採用は廃止されています。
このように労働基準監督官や労働行政にかかわる職員数を意図的に減らしておきながら、「総事業所数の定期監督実施割合が3%だ」などと非難するかのように主張することはまったく不誠実だとしか言えません。
 早急にILO基準を満たすために、政府は労働基準監督官及び事務官や技官の増員こそ実施すべきだと思います。

第2には、労働基準監督官は公権力の行使にかかわるということです。
労基法101条や労基法102条でも明らかなように労働基準監督官の業務は、国家権力を背景にした公権力の行使も含みます。
 ILO第81号条約(工業及び商業における労働監督に関する条約)は、工業的事業場及び商業的事業場における労働監督制度の保持を義務付け(第1条)、監督職員は分限及び勤務条件について、身分の安定を保障され、かつ政府の更迭及び不当な外部からの影響と無関係である公務員でなければならないとしている(第6条)。また、労働監督官は、監督対象事業場に立ち入る権限、調査・検査・尋問を行う権限を有するものとしている(第12条)。すなわち、公平中立に業務に当たることのできる公務員が、労働監督業務を行うために必要な権限や強制力を背景にして労働監督業務にあたるべきとされている。この条約は日本も批准しています。
 つまり、労働基準監督官及び監督署の業務は、公務員たる労働監督職員が行うべきであり、民間人が行うことができません。

このような大原則に対して、タスクフォ−スの委員から「定期監督業務の立ち入り調査は強制ではなく、原則として事業所の任意によるのであれば。定期監督業務の一部を民間業者に委託してもいいのではないか」と発言しました。要するに規制の緩和ですね。
この意見に対し厚生労働省は、次のように言っています。
「労働基準監督官による立入調査の場合であってもまずは協力を要請することが一般的である。但し、事業主がこのような任意の調査に応じない場合には、監督官は、その場で労働基準法に基づき携帯している監督官証票を示した上で、相手方の同意なく立ち入る権限を有している。これに対して虚偽の陳述をする、帳簿書類を提出しないなどした者は、同法に基づく罰則の対象になる。
委託を受けた民間事業者が任意の調査をおこない、問題がある場合に監督官に取り次ぐ場合、調査から監督官による指導までタイムラグが生じることから、その間に証拠帳簿の隠蔽など不適切な行為がなされる可能性がある。また迅速な労働者保護が行えない蓋然性が高い。
監督官が行っている業務のコアな部分は、やはり誰かにご協力いただくということにはならない部分である。」

この厚生労働省の意見は法律に基づいた正当なものであると思います。

第3に、民間の受託者として社会保険労務士が想定されていることです。
 社労士の大部分は、企業を顧客先として、あるいは企業内の従業員として、その労務管理や社会保険・労働保険の諸手続を取り扱っているのが普通です。そのため社労士の中には「労働基準監督官対策」を業務としている人もいますし、企業が従業員と労働トラブルになった際には、企業側に立ってこれを補助する社労士もいます。
 なお2015年には愛知県清洲市の社労士が「社員をうつにする方法」「モンスター社員を解雇する方法」などの記事を自身のブログに掲載し、2015年12月28日には愛知県社労士会から、社労士に対する信用を失墜させるものとして3年間の会員権活動停止処分と退会勧告を受けたという事件がありました。
まあ、弁護士でも企業の顧問となって使用者側の利益を優先する立場の人もいるので、そういう意味では、社会保険労務士であろうと、弁護士であろうと、公認会計士であろうと民間委託を受けることはふさわしくないと言うべきだと思います。

 なお、私の所属している日本労働弁護団は、「取りまとめ及び第1次答申が示す労働基準監督業務の民間活用等に関する措置を実施することに反対し、実効的かつ適切な労働監督行政が行われるよう、少なくともILO基準を満たすように労働基準監督官を増員することを求めるものである。」としています。                                                                                          以 上
posted by 金山総合法律事務所 at 10:45| 労働問題

2017年05月22日

憲法25条を守る5/18共同集会に参加してきました


5月18日、医療生協の方に誘われて、生存権を守ろう!と東京の日比谷野外音楽堂で行われた全国集会に行って来ました。
東京なんて久しぶり、といった物見遊山的な気持ちもありましたが、全国から3500人もの熱い思いをもった人が集まって来られていて、ちょっと反省でした。

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 憲法25条といえば「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という中学校で教えられた条文をすぐに思い出しますが、それを保障・実質化するための国の責任についても書かれていることを忘れがちです。
 近年、子どもの貧困が叫ばれていますが、一人親家庭の2人に1人は相対的貧困だそうです。食事も満足にとれない子どもがいることに、とても胸が痛みます。障害者も65才になると介護保険に変わるため、今までは不要だった医療費がかかります。発言者の中には受給している年金以上の医療費を支払っているという方もいらっしゃいました。保育士の方からは、やりがいのある仕事だけれど長時間労働で低賃金なのでもうくたくたです、との発言がありました。
 つつましく暮らしている一人親家庭、利息も含め多額の奨学金の返済に苦しむ非正規労働者の若者、目減りする一方の年金だけが頼りの高齢者等々。少数のとってもお金持ちな人は別ですが、圧倒的多数の国民は一生懸命に働き、切り詰めた節約生活をしています。「可能な限りの努力をしても人間らしく生きていけないので国に責任をもって下さい」とお願いすることは憲法25条に反するんでしょうか。生活保護を受けることに罪悪感を感じさせたり、なんでもかんでも自己責任をちらつかせる国のあり方に常日頃憤りを感じていた私です。参加者の方々の発言が身につまされました。
 税金は少しくらい高くても我慢します。「税金は、人が生まれてから死ぬまでに必要な保育・医療・介護を受けられる世の中にするために使って下さい」とお願いしたいです。

 集会では川田龍平・福島瑞穂・山本太郎・田村智子の各議員からの挨拶もありました。閉会の挨拶は菅原文太さんの奥様の文子さんでした。突然の大雨に見舞われた参加者の体のことを心配されていたのがとても素敵で印象的でした。
集会後デモ行進と国会請願がありましたが、あまりの雨に負け帰路に。でもせっかく東京に来たのだからと、急遽買った雨合羽を着たまま東京駅まで歩き、煉瓦の駅舎をバッチリ写真におさめてきました。

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事務局  塚本久美子
posted by 金山総合法律事務所 at 15:46| 憲法

保育園の現状

      保育園の現状
                                     弁護士 渥美玲子

2016年2月に「保育園落ちた、日本死ね」という強烈な印象を与えたブログが世に知られ、国会でも取り上げられたうえ、2016年新語・流行語大賞にまで選ばれました。
そこで保育園について見てみました。

 少し遅い情報ですが、厚生労働省は今年1月、昨年2016年の1年間に生まれた子どもの数が98万1000人だったと発表しました。
 この出生数が100万人を割ったのは、なんと統計を取り始めた1899年以降初めてのことだそうです。ちなみに2014年は100万3539人、2015年は100万5677人だったそうで、一旦、増加はしたものの、基本的には減少傾向は収まらないと予測されています。

他方、待機児童問題については、厚労省は、今年2017年4月「保育所等関連状況の取りまとめ及び待機児童解消加速化プラン」を発表し、2016年4月現在保育所等定員は263万人で前年比10万3000人増加したこと、待機児童数は2万3553人で前年比386人増加したことなどの報告をしました。

ところでこの「待機児童」の厚労省の定義は揺れ動いており、2001年には、狭く定義されるようになり、「他に入所可能な保育所があるにもかかわらず待機している児童や、地方単独保育事業を利用しながら待機している児童」については除外することになりました。そのため、2001年4月の統計は2種類でており、新定義では待機児童が2万1000人となったものの、従来の定義では3万5000人とされました。なお、地方単独保育事業とは、無認可保育所ではあるが地方自治体の基準を満たしており、一定の援助を受けている保育所をいうそうです。

実は、昨年からもう一つの定義の必要性が言われています。それは「潜在的待機児童」「隠れ待機児童」の存在です。昨年の2016年9月厚労省は、統計から除外されている「潜在的待機児童」が昨年2015年より8000人多い6万7354人いたと発表しました。
この潜在的待機児童とは、親が育児休業中で保育園の入所申請をしていない場合、親が育児のために無職で求職活動をしていない場合、親が特定の保育所を希望しているため自治体の勧める保育所に入所申請していない場合、自治体の認可保育園に入りたいのに無認可保育園に入れている場合などを言います。このようなケースは、厚労省の定義からも除外されているうえ、自治体により定義が異なるので全国的な状況把握ができていないのです。
厚労省は以前からこのような潜在的待機児童について把握しており、「定義の見直し」を2017年4月から行う予定でしたが、今年はそれを行わず、来年2018年4月以降に集計する分からにするそうです。

ところで、少子化が進んで子どもの数が減っているのに、どうして保育所が不足しているのか、という疑問があるようです。
 その答えは、やはり厚生労働省が発表したグラフを見れば分かります。
1980年から2016年までの専業主婦世帯と共働き世帯の数を出したグラフがあります。
 1980年から1992年頃までは専業主婦世帯が共働き世帯よりも多かったのですが、1996年頃からなんと共働き世帯の方が多くなっています。私はこれを勝手に「X型グラフ」と呼んでいますが、まるで、1992年頃から1996年頃に2つの線が交差するかのように入れ違っているのです。1980年頃は専業主婦世帯が1100万世帯以上、共働き世帯が600万世帯だったのに対し、2016年には共働き世帯は1129万世帯であるのに対し、専業主婦世帯は664万世帯になり、完全に逆転しました。
このことは女性の雇用者数をみても明らかで、厚労省の調査では、1980年には女性の雇用者数は1354万人(全雇用者数3971万人の34%)だったのに対し、2016年にはなんと2531万人(全雇用者数5729万人の44%)に増えているのです。
このように1990年代から特に共働き女性が増えたため、子どもを保育所に預ける必要性が大きくなったのです。

しかも働いている女性は十分な賃金を貰っているかと言えば、そうでもありません。
例えば、2015年の総務省調査をみると、全雇用者数5474万人のうち、短時間雇用者は1634万人(全雇用者の約30%)いますが、その1634万人のうち女性は1110万人(全短時間雇用者の67.9%)なのです。時給については地域によってばらつきがあるようですが、愛知県では平均時給967円となっていて全国平均975円よりも安くなっています。ただし私が見た感じでは時給850円でパートを募集している店舗も結構あるようで、愛知県の最低賃金845円とほぼ同額です。
 ちなみに厚労省の統計では短時間雇用者というのは、「1週間の就業時間が35時間未満の者」とされているので、週休2日の会社の正社員の週の所定労働時間と同じですね。
2008年にアメリカでおきたリーマンショックの影響を受け日本の経済は大きな打撃を受けました。さらに2012年に発足した安倍内閣は大企業や富裕層優先のトリクルダウン理論を柱とするアベノミクス政策を強行し続け、日本の経済はデフレ不況が続いたままです。そのため日本の貧困率は世界4位というありがたくない地位を占めることになりました。
女性が働かないと生活はやっていけないのが現状なのです。
このような事情から働く女性にとっては保育園は不可欠なので、結婚する頃から家の近くに保育園があるかないか気にしたり、妊娠が分かったときから認可保育園探しを始めたり、いろいろな保育園の評判を調査したり、今は「保活」と言われていますが、本当に大変なのです。
「子どもができたら仕事をやめればいい、と考えている女性は少数派」が実態なのです。

ちなみに今年2017年5月18日、名古屋市は、「今年4月1日現在、国の定義に基づく待機児童は0人だったが、特定の保育所等の利用を希望されている等により保育所、認定こども園、地域型保育事業が利用できていないわゆる隠れ待機児童が715人となった」と発表しました。この715人という数字は昨年の585人よりも増え、2割増しになっています。
posted by 金山総合法律事務所 at 15:38| 両性の平等

2017年04月28日

レンのこと

 我が家に犬のレンがやってきたのは、3年8ヶ月前です。チワワとパピヨンのミックス犬でとても恐がりな性格です。レンは、兄弟と思われる犬と2匹で歩いているところを保護され、名古屋市動物愛護センターに引き取られました。
元気で人なつこい相方はすぐに引き取り手が決まりましたが、レンは愛護センターでも3本の指にはいる不思議ちゃんで、センターでも里親を吟味されていたそうです。センターでの注意事項は「元気いっぱいに接しないこと」というこれも不思議なものでした。かわいいからと、飼い主の感情を押しつけると怖がってストレスを感じるらしいのです。

 我が家に来たレンは、最初全く鳴かずおびえてばかり。ドッグフードもふやかさないと食べないし、散歩の途中でおやつをあげても食べない犬でした。初めて鳴き声を聞いた時は、感動というより「えっ、鳴くんだ!?」というのが率直な感想でした。
 今では、元気いっぱい鳴きます。いつも食べ物を探してウロウロしています。寝る時は自分で襖を開けて私の布団に入ってきます。我が家のアイドルです。
 でも、今でも散歩や外出を怖がり、人間と遊ぶことができません。犬や家族以外の人を怖がります。たぶん、最初の飼い主に遊んでもらうことがなかったのでしょう。散歩をして他の犬と接し、社会性を身に着けることもなかったのだと思います。
 ミックス犬は人の手で交配させて作り上げた犬です。見た目はとても愛くるしく誰もが「かわいい!」と声をあげます。でも、命のあるものを育て天寿を全うさせるのはとても大変なことです。しつけには時間も労力もかかります。病気をすればお金もかかります。老犬になると毛が抜けたりして容貌も変わってきます。認知症になることもあるそうです。そんなリスクがあることを充分に認識してペットを飼ってほしいです。

1494228699141.jpg 人間の身勝手で捨てられてしまったレン。知らない場所でどんなに心細かったか、と思うと今でも涙が出そうになります。売れる犬種を作り出す人間。かわいいからと安易に飼って、育てられないと平気で捨ててしまう人間。動物愛護センターで保護された動物も里親を探してもらえる者は僅かです。多くは保健所に送られ殺処分されます。
 ドイツでは動物愛護が国の法律で決められており、育てられなくなった動物は国の予算で建てられた施設で死ぬまで生活することができます。日本はまだまだ遅れていますが、自己でできることもまだまだあるはずです。ペットも家族です。命の重みを受け止められる世の中にしたいものです。

 愛知県弁護士会では、憲法週間記念行事として5月21日(日)午後1時から「動物愛護を通して考えるいのちの大切さ」というイベントを行います。
 今一度、みんなで命について考えてみませんか。詳しくは愛知県弁護士会のホームページをご覧ください。

事務局 塚本久美子
posted by 金山総合法律事務所 at 12:45| 日常から見えてくること

2017年04月27日

トヨタ自動車 〜その7 女性〜

トヨタ自動車 〜その7 女性〜

トヨタ自動車と言えば「男の会社」とつい思ってしまう。

トヨタ自動車のサイトの役員の欄をみると、取締役・監査役、執行役員として約65人の役員がいるが、女性は監査役として1人いるだけであって、あとは全員男性である。
いうまでもなく監査役は、企業の経営方針などに携わることはないから、経営陣のメンバーとは言い難いであろう。また執行役員というのは会社法上の取締役ではなく、従業員ではあるが役員待遇を受けて決定した重要事項を実行する責任者という意味である。にもかかわらず女性は執行役員にもなっていない。

労働者関連のデータをみると、2015年(平成27年)においては、全労働者数7万2779人のうち女性はわずか8196人であり、残りの6万4583人は男性だった。労働者の女性割合は11%ということである。同年の採用状況についてみると、全採用者数2185人のうち、女性は215人であるのに対し、男性は1970人である。つまり女性の採用比率は9%である。なお、そのうち女性は主に事務職として採用されており、女性は42人、男性61人となっている。
また同年の女性管理職の割合についてもトヨタ自動車は公表しているが、主任以上は3.7%、主幹以上が1.4%としている。ちなみに主幹とか主任というのは、専門職名で、下から「主任」、「主幹」「主査」「理事」と4つあり、これを管理職に当てはめると主任はグループ長相当、主幹は室長相当、主査は部長相当だそうである。「主査」の女性割合が記載されていないので、このことは主査の女性が不存在であることを意味していると思われる。なお「理事」という管理職が、従業員の最高職である執行役員を指すのかどうかも私には不明である。

ところで政府は「男女共同参画基本計画における成果目標」という方針を掲げているが、2016年(平成28年)5月に発表された第4次目標のうち民間企業に関する目標は次のとおりだった。
  係長相当職 2020年(平成32年)までに25%
課長相当職 2020年(平成32年)までに15%
部長相当職 2020年(平成32年)までに10%
上場企業役員に占める女性の割合
         2020年(平成32年)までに5%(早期)、更に10%
このような政府の目標との比較において、トヨタ自動車では、具体的にどの管理職が該当するのか私には不明であるから、間違いを覚悟で単純に、係長相当職を「主任」、課長相当職を「主幹」、部長相当職を「主査」と当てはめてみた。
 すると、トヨタでは次のとおりになる。
 係長相当職=主任 2015年 3.7% (2020年目標25%)
課長相当職=主幹 2015年 1.4% (2020年目標15%)
部長相当職=主査 2015年   0% (2020年目標10%)
上場企業役員に占める女性の割合
            2015年   0% (2020年目標5%)

トヨタ自動車において女性の昇進・登用が政府の目標値に達するのは、いつのことになるのか、まったく予想することすらできない。

ところで、トヨタ自動車では女性の役員や幹部は輩出されないのではないかと、私は内心思っている。
実は2006年(平成18年)4月に愛知県三河湾にある蒲郡市に、海陽学園という中高一貫校が設立された。通常私立学校といえば高い教育理念のもった教育者が設立することが多いが、この学校はトヨタ自動車、東海旅客鉄道、中部電力など中部財界のトップの企業が設立していることが大きな特徴である。つまり教育理念よりも企業理念が最優先とされてる学校なのである。
 この学園の特色は、「6年間の全寮制により次世代のリーダーの育成、将来の日本を牽引する人材の育成するために、リーダーシップを発揮する上で欠かせない社会性や道徳心を養うこと」だという。
 一見、素晴らしいことのように思えるが、この学校は男性に限る、いわゆる男子校であって、女性は排除される。要するに女性は将来の日本を牽引するリーダーとは、まったく想定していないことは明らかである。
またある情報によれば、海陽学園に入るための入学金や入寮費は60万円、年間の学費は約240万円、在学中の食費約40万円などがかかり、1年間で約300万円、6年間で1800万円が必要だというから、よほどの富裕層でなければ子どもを海陽学園に入学させることなどできるはずもない。
 従って、富裕層の家庭の男子が入学することになる。
トヨタ自動車のイメージする日本のリーダーというのは、つまるところ富裕層出身男性ということであるから、その限界は自ずと分かるし、ましてや今後女性の役員や幹部が輩出されるはずはないだろうと予想することも簡単である。
以 上
posted by 金山総合法律事務所 at 12:41| 重要判決

トヨタ自動車 〜その6 期間工〜

トヨタ自動車 〜その6 期間工〜


近年、労働者における非正規雇用の割合が高くなったと言われているが、厚生労働省の発表によれば、平成28年おいては役員を除く雇用者全体の37.5%になった。人数としては、全労働者のうち正規雇用者数3355万人に対し、非正規雇用者数は2016万人だという。

 トヨタ自動車にもいわゆる非正規雇用労働者がおり、「期間工」と呼ばれている。昭和38年に「期間工」(季節労働者)として採用されるようになったという。

期間工は、トヨタ自動車に直接雇用されているが、その雇用形態は募集要項でみると次のようになっている。
  基本日給  9800円〜10600円
勤務時間  連続2交替勤務(1日7時間35分)
      基本となる勤務形態(1直、2直を1週間毎に交替)
     1直(5日)6:25〜15:05
     2直(5日)16:00〜0:40
    業務の都合により残業、休日出勤あり。
      他に、連続3交替勤務、常昼勤務あり。
休日  原則週休2日制(土・日曜日)
契約期間更新 初回契約 3ヶ月
  1回目更新3ヶ月
  2回目〜5回目更新 6ヶ月
  6回目更新 5ヶ月(連続2年11ヶ月)
会社の判断基準
       @ 契約期間満了日以降の会社の生産見通し、その他業務量、
                A 本人の勤務成績、勤務態度、能力、健康・体力
@とAを会社が総合的に考慮して更新が必要と判断した限り、契約を        更新する場合があります。

 以上を分かりやすくすると、1ヶ月4週として20日働くことになるので、賃金は単純に日給1万円として計算すると月20万円である。ここから健康保険料、厚生年金、雇用保険、住民税、所得税など控除された場合、手取り額は幾らになるのだろうか。また契約更新は当然更新ではなく、その都度会社の判断に委ねられるので将来を見通すことができない。おそらく期間工でもQCサークル活動で成果を上げないと、勤務成績、勤務態度などに影響するので契約更新も難しいという実態があるのではないか。
さらに契約が更新されても最長2年11ヶ月で止まる。独身者の場合には独身寮に入れば住居費は無料になるが、寮に入らない場合には月20万円では生活は楽ではないと思われる。しかも深夜勤務を含む2交替勤務であるから生活リズムが崩れ身体的精神的に疲労が蓄積することは容易に想像できる。
結局、期間工とは、雇用期間の定めのある労働契約を締結している労働者であって、トヨタ自動車にとって「景気の調整弁」として使い捨ての労働者なのであろう。

ところで政府は、非正規雇用と正規雇用の賃金等の待遇格差が世界的にみて格差が大きいことから、「同一労働同一賃金原則」から不合理な格差を是正するための努力をしようとしている。賃金格差の程度は厚労省の統計調査によれば平成28年においては、正社員の場合平均時給は1950円であるのに対し、正社員でない場合、平均時給は1299円とされている。特に正社員の場合勤続年数に従って賃金は増えるが、正社員でないと定年まで、ほぼ同じ時給となっているので、生涯賃金額は大きな格差が生じる。

ではトヨタ自動車における賃金はどのようになっているか、であるが、ネット情報によれば、2017年3月現在の発表では、正社員の賞与も含めた平均年収は814万円となっており、年令別でみると、30歳代634万円〜724万円、40歳代814万円〜911万円、50歳代968万円〜976万円という。さらに総合職、技術職、一般職との間には年収に大きな格差があり、総合職であれば年収1140万円、技術職797万円、一般職は814万円となっている。
このような数字を見てみると、期間工の年収は240万円程度であり、仮に時間外残業や休日労働をしたとしても年収は多くても360万円程度であろうと推測することができる。そうしてみると、期間工とそうではない労働者の間には大きな賃金格差があると言わなければならない。
トヨタ自動車における期間工の割合は不明であるが、2017年3月に発表された東洋経済オンラインでみると、トヨタ自動車の非正規労働者数は連結で8万6843人であり、連結での労働者数34万8877人に対して20%だったという。2016年の数字では、非正規労働者数は8万5778人、労働者数33万8875人だったから、人数としては増加していることになる。
 トヨタ自動車は期間工を正社員として登用する方針も打ち出してはいるが、現在のところ期間工の割合が大幅に減るという結果にはなっていないようである。

以 上
posted by 金山総合法律事務所 at 12:35| 重要判決