2018年01月27日

日本は114位

両性の平等
          日本は114位

毎年10月、世界経済フォ−ラム(WEF)が「国際男女格差レポート」でジェンダーギャップ指数を発表しています。
2017年10月の発表では、日本は144ヶ国中114位でした。
上位10位を見ると、1位アイスランド、2位ノルウェイ、3位フィンランド、4位ルワンダ、5位スウェーデン、6位ニカラグア、7位スロベニア、8位アイルランド、
9位ニュージーランド、10位フィリピンです。
 ちなみにいわゆる先進国を順位をみると、
 フランス11位、ドイツ12位、カナダ16位、スイス21位、スペイン24位、ポルトガル33位、アメリカ49位、ロシア71位、イタリア82位、中国100位となっています。
 日本が114位というのが如何にかけ離れて低位か、一目瞭然ですね。

今回の発表ではマスコミも大きく取り上げていますが、それは日本の女性差別が各国の状況に比較して良くなっていないことがはっきりしたからです。

 日本の順番をみてみましょう。
  2006年   80位
  2007年   91位
  2008年   98位
  2009年  101位
  2010年   94位
  2011年   98位
  2012年  101位
  2013年  105位
  2014年 104位
 2015年  101位
  2016年  111位
  2017年  114位

 つまり日本の女性の地位は良くなっているどころか、悪くなっているのです。
 ちなみに日本が100位以下に安定したのは、2012年からですが、今の第2次安倍内閣が2012年12月に登場した時となぜか一致しています。
 安倍首相は就任以来、「女性が輝く」ことをしきりに言っていますが、むしろ女性は「太陽から月に戻った」という感じすらあります。

このように日本の地位を下げた原因は、4つの分野、つまり、経済活動の参加と機会(Economic Partipation and Opportunity)、教育(Educational Attainment)、健康と生存(Health and survival)、政治的影響力(Political Empowerment)のうち、主に2つです。
 「経済的活動」については114位、「政治的影響力」は123位という低さでした。
他の「教育」については74位、「健康と生存」は、なんと1位でしたから、特に政治的影響力の低さは世界に恥じるべきでしょう。

日本は憲法の前文で「国際社会で名誉ある地位を占めたいと思う」と宣言しました。 このジェンダーギャップランキングで、日本がこのような不名誉なランク付けをされたことについて一体政府はどのように考えているのか、聞いてみたいものだと思います。

 なお、このWEFのレポートやランキング表は誰でもネットで見ることができます。

                         弁護士 渥 美 玲 子
posted by 金山総合法律事務所 at 16:08| 両性の平等

「逃げ恥」と家事の対価

          「逃げ恥」と家事の対価
弁護士 渥 美 玲 子
「逃げるは恥だが、役に立つ」というドラマが人気を博し、東京ドラマアワード賞やコンフィデンスアワード賞など多くの賞をとりました。
このドラマの興味深いところは、は35歳の独身男性(星野源)が、25歳の独身女性(新垣結衣)と契約結婚し、契約妻を住み込みで家事をさせ、対価として賃金を支払うというものです。法的には雇用契約ですね。そのためこのドラマでは「家事労働の対価」が大きな話題になりました。
 もちろん、このドラマは妻と称する女性に家事の対価としての賃金を支払うだけの余裕のある収入を得ている独身男性が主人公になっているので、そのような経済力のない男性には、あまり関係のあることではないでしょう。しかし、妻を専業主婦としている夫や、専業主婦として忙しい毎日を働いている妻にとっては、いろいろ考えさせることになったようです。

 ドラマの中で独身男性、つまり契約夫が対価を試算したときの台詞は次のようなものだったそうです。
「試算してみたんです。家賃、水道、光熱費等の生活費を折半した場合の収支。食事を作ってもらった場合と外食との比較。毎週家事代行スタッフを頼んだ時との比較。そしてOC法に基づいた専業主婦の家事労働時間は年間2199時間になります。それを年収に換算すると304万1000円。そこから時給を算出し、1日7時間労働と考えたときの月給がこちら。契約妻の生活費を差し引いた手取りがこちらで、健康保険や扶養手当を利用した場合の試算をしてみました。」
この結果、月給は19万4000円ということです。

ところで、台詞にでてくる「OC法」とは、内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部で無償労働の貨幣評価をおこなう際に用いる算出方法の一つで、機会費用法(Opportunity Cost method)というものです。説明によれば「家計が無償労働を行うことによる逸失利益で評価する方法である。無償労働を行った者の賃金率を使用するため評価額には、男女間の賃金格差などが反映し、無償労働の内容ではなく、誰が無償労働を行ったかで評価が変わりうる。賃金換算の際には厚生労働省:賃金構造の基本統計調査の産業計(性別・年齢階層別)所定内平均賃金率を用いる」とされています。
つまり、性別による賃金率を採用するということは、日本における男女賃金格差をそのまま採用するので問題があるのです。ちなみに、2014年(平成26年)の賃金センサスをみると、35歳の男性の平均賃金は年収(毎月決まって支給する現金額+年間賞与額・その他特別給与額)にして527万6100円、25歳の女性のそれは341万9300円です。なお、35歳の女性の場合の年収は381万9700円ですから、相当に男女格差があります。
なので台詞で「年収に換算すると304万円」というのは、賃金額が男性よりも低い女性の場合、つまり女性差別を前提とした数字でしかありません。

もうひとつ、台詞で出てくる「専業主婦の家事労働時間2199時間」ですが、年間2199時間の労働は結構長いのです。厚生労働省の「女性労働の分析−2015年」によると、女性常用労働者1人平均月間総実労働時間(所定内労働時間+所定外労働時間)は124.8時間、男性の場合には160.7時間です。これを1年間に換算すると、女性は1497時間、男性は1928時間となって、年2199時間の労働は男性の労働時間よりも約270時間も長い長時間労働なのです。契約夫と契約妻は36協定も結ぶ必要がありますね。しかも、労働基準法では、時間外労働をした場合には割り増し賃金が支払われることになっているので、単純に時給×労働時間という計算は間違ってることになります。

なお、平成25年6月に公表された内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部の「家事労働等の評価について−2011年データによる再推計」では、2011年の無償労働の貨幣評価額について、「OC法では女性の場合、専業主婦の無償労働評価額がもっとも高く、1人当たり年齢平均では304,1万円。1人当たり無償労働時間は、女性の場合、専業主婦は2199時間」と記載してあるので、ドラマでは、この論文を参考にしているものと思います。

また、上記の契約夫の台詞では「1日7時間労働,年間2199時間」と言っているので、計算してみると、2199時間÷7時間=年間314日働くことになっています。週休完全2日の企業が多いことを考えると、1年間53週のうち夏季休暇や年末年始休暇などを除外しても、2日×53週=106日は休日ですから、年間の労働日数は365日−106日=259日しかありません。つまり契約妻が働くことを予定されている年間労働日数314日というのは、休日労働することを予定されている日数なのですね。
なお、1時7時間ではなく1日8時間労働で計算したとしても、年間274日働くことになるので、やはり休日労働が予定されていることになります。

また住み込みであれば、実際に1日7時間という区切りが困難で、例えば、契約夫が残業で帰宅が遅くなり夕食時刻が遅くなるとか、夜中に病気になったときには医者に連れて行き看護するなどの場合も想定できます。またこのドラマでは子供はいないので、仮に契約夫に子供がいて育児の必要性があることなども考えると、育児の評価もしなければなりません。家事労働の評価は本当に難しいですね。
女性の多くが担っている家事労働をどのように可視化して、経済的評価をするべきなのでしょうか。これからきちんと議論されるべきだと思います。

ただ、私にはこのドラマの題名「逃げるは恥だが役に立つ」という意味が分からず、調べたところ、ウィキペディアには「恥ずかしい逃げ方だったとしても、生き抜くことが大切」という意味だと書いてありました。しかし、このドラマの2人の生き方のどこが恥ずかしいのか私には分かりませんでした。
以 上
posted by 金山総合法律事務所 at 14:40| 両性の平等

性暴力に関する刑法改正と付帯決議

         性暴力に関する刑法改正と付帯決議
                
弁護士 渥 美 玲 子

去年のことになりますが、性暴力についての刑法が2017年6月16日に改正され、同年7月13日から施行されました。

第176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以 上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対しわいせつな行為をした者も同様 とする。

第177条
  13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交または口腔性交(以 下、性交等)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
  13歳未満の者に対し性交等をした者も同様とする。

第178条
1 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、または心神を喪失させ,若しくは抗拒不  能にさせて、わいせつな行為をした者は第176条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、または心神を喪失させ、若しくは抗拒不  能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

第179条
1 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力がある  ことに乗じてわいせつな行為をした者は、第176条の例による。
2 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力がある  ことに乗じて性交等をした者は、第177条の例による。

以上の他、第181条(強制わいせつ等致死傷)、第229条(親告罪)、第241条(強盗・強制性交等及び同致死)などの条文も改正されました。

 ところで、あまり知られていませんが、衆議院や参議院では「刑法の一部を形成する法律案に対する付帯決議」として次のような決議がなされ、特に参議院での付帯決議は9項目もありました。ただ、実はその後この付帯決議がどのように実施されているのか、積極的には公表されていないようです。
 ちなみに参議院での2017年6月16日の付帯決議が次のようなものでした。

「政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をするべきである。
@ 性犯罪は、被害者の心身に長年にわたり多大な苦痛を与え続けるばかりか、その人格や尊厳を著しく侵害する悪質重大な犯罪であって、厳正な対処が必要であるところ、近年の性犯罪の実情等に鑑み、事案の実態に即した対処をするための法整備を行うという本法の適正な運用を図るため、本法の趣旨、本法成立に至る経緯、本法の規定内容等について、関係機関等に周知徹底すること。
A 刑法第176条及び第177条における「暴行又は脅迫」並びに刑法第178条における「抗拒不能」の認定について、被害者と相手方との関係性や被害者の心理をより一層適切に踏まえてなされる必要があるとの指摘がなされていることに鑑み、これらに関連する心理学的・精神医学的知見等について調査研究を推進するとともに、これらの知見を踏まえ、司法警察職員、検察官及び裁判官に対して、性犯罪に直面した被害者の心理等についての研修を行うこと。
B 性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の過程においては、被害者のプライバシー、生活の平穏その他の権利利益に十分配慮し、偏見に基づく不当な取扱いを受けることがないようするとともに、二次被害の防止に努めること。また、被害の実態を十分に踏まえた適切な証拠保全を図ること。
C 強制性交等罪が被害者の性別を問わないものとなったことを踏まえ、被害の相談、捜査、公判のあらゆる過程において、被害者となり得る男性や性的マイノリティに対して偏見に基づく不当な取扱いをしないことを、関係機関等に対する研修等を通じて徹底させるよう努めること。
D 起訴・不起訴等の処分を行うに当たっては、被害者の心情に配慮するとともに、必要に応じ、処分の理由等について丁寧な説明に努めること。
E 性犯罪が重大かつ深刻な被害を生じさせる上、性犯罪被害者がその被害の性質上支援を求めることが困難であり、その被害が潜在化しやすいという性犯罪被害の特性を踏まえ、第三次犯罪被害者等基本計画等に従い、性犯罪等被害に関する調査を実施し、性犯罪等被害の実態把握に努めるとともに、被害者の負担の軽減や被害の潜在化の防止等のため、ワンストップ支援センターの整備を推進すること。
F 刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成28年法律第54号)附則第9条第3項の規定により起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置についての検討を行うに当たっては、性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の実情や、被害者の再被害のおそれに配慮すべきであるとの指摘をも踏まえること。
G 児童が被害者である性犯罪については、その被害が特に深刻化しやすいことなどを踏まえ、被害児童の心情や特性を理解し、二次被害の防止に配慮しつつ、被害児童から得られる供述の証明力を確保する聴取技法の普及や、検察庁、警察、児童相談所等の関係機関における協議により、関係機関の代表者が聴取を行うことなど、被害児童へ配慮した取組みをより一層推進していくこと。
H 性犯罪者は、再び類似の事件を起こす傾向が強いことに鑑み、性犯罪者に対する多角的な調査研究や関係機関と連携した施策の実施など、効果的な再犯防止対策を講ずるよう努めること。  」

まず重要だと思ったのは、この付帯決議は「政府及び最高裁判所」宛てになっているということです。性暴力については、行政だけでなく、なによりも司法が従来の扱い方についてしっかり反省して、犯罪の意味を認識しなければならないということでしょう。ちなみに第1項については衆議院の付帯決議では「関係期間及び裁判所の職員等に対して周知すること」となっています。各裁判所の職員に対して周知徹底はなされたのでしょうか。第2項についても「司法警察職員、検察官及び裁判官に対して性犯罪に直面した被害者の心理などについてこれらの知見を踏まえた研修を行うこと」とされていますが、裁判官に対する研修はどのような内容がどのような方法にて実施されたのでしょうか。
最近のニュースをみると、例えば伊藤詩織さんが告発した準強姦罪については不起訴処分となったということですが、第5項の「起訴・不起訴等の処分を行うにあたっては、被害者の心情に配慮するともに必要に応じ、処分の理由等について丁寧な説明に努めること」とあるにもかかわらず、実際はどうだったのか、などの疑問もわいてきます。
また昨年10月の座間市9人殺害事件ではマスコミは被害女性全員の年齢や氏名を顔写真付きで公表しました。被害女性は殺人だけではなく性暴力も受けていたとの可能性もあったことから、第3項の「性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の過程においては被害者のプライバシー、生活の平穏その他の権利利益に十分配慮し」とされている規定が無視され、被害者家族の心情に対する配慮が欠けていたのではないかとの疑問もあります。
・・・などなど実施状況について、いろいろな疑問が出てきますが、実施状況をチェックする体制がどのようになっているかも不明ですね。
今回の刑法改正が、どれだけきちんと司法に理解されるのかを、チェックする責任は、我々市民にもあるかもしれないと思います。
以 上
posted by 金山総合法律事務所 at 14:33| 法改正