2018年01月27日

日本は114位

両性の平等
          日本は114位

毎年10月、世界経済フォ−ラム(WEF)が「国際男女格差レポート」でジェンダーギャップ指数を発表しています。
2017年10月の発表では、日本は144ヶ国中114位でした。
上位10位を見ると、1位アイスランド、2位ノルウェイ、3位フィンランド、4位ルワンダ、5位スウェーデン、6位ニカラグア、7位スロベニア、8位アイルランド、
9位ニュージーランド、10位フィリピンです。
 ちなみにいわゆる先進国を順位をみると、
 フランス11位、ドイツ12位、カナダ16位、スイス21位、スペイン24位、ポルトガル33位、アメリカ49位、ロシア71位、イタリア82位、中国100位となっています。
 日本が114位というのが如何にかけ離れて低位か、一目瞭然ですね。

今回の発表ではマスコミも大きく取り上げていますが、それは日本の女性差別が各国の状況に比較して良くなっていないことがはっきりしたからです。

 日本の順番をみてみましょう。
  2006年   80位
  2007年   91位
  2008年   98位
  2009年  101位
  2010年   94位
  2011年   98位
  2012年  101位
  2013年  105位
  2014年 104位
 2015年  101位
  2016年  111位
  2017年  114位

 つまり日本の女性の地位は良くなっているどころか、悪くなっているのです。
 ちなみに日本が100位以下に安定したのは、2012年からですが、今の第2次安倍内閣が2012年12月に登場した時となぜか一致しています。
 安倍首相は就任以来、「女性が輝く」ことをしきりに言っていますが、むしろ女性は「太陽から月に戻った」という感じすらあります。

このように日本の地位を下げた原因は、4つの分野、つまり、経済活動の参加と機会(Economic Partipation and Opportunity)、教育(Educational Attainment)、健康と生存(Health and survival)、政治的影響力(Political Empowerment)のうち、主に2つです。
 「経済的活動」については114位、「政治的影響力」は123位という低さでした。
他の「教育」については74位、「健康と生存」は、なんと1位でしたから、特に政治的影響力の低さは世界に恥じるべきでしょう。

日本は憲法の前文で「国際社会で名誉ある地位を占めたいと思う」と宣言しました。 このジェンダーギャップランキングで、日本がこのような不名誉なランク付けをされたことについて一体政府はどのように考えているのか、聞いてみたいものだと思います。

 なお、このWEFのレポートやランキング表は誰でもネットで見ることができます。

                         弁護士 渥 美 玲 子
posted by 金山総合法律事務所 at 16:08| 両性の平等

「逃げ恥」と家事の対価

          「逃げ恥」と家事の対価
弁護士 渥 美 玲 子
「逃げるは恥だが、役に立つ」というドラマが人気を博し、東京ドラマアワード賞やコンフィデンスアワード賞など多くの賞をとりました。
このドラマの興味深いところは、は35歳の独身男性(星野源)が、25歳の独身女性(新垣結衣)と契約結婚し、契約妻を住み込みで家事をさせ、対価として賃金を支払うというものです。法的には雇用契約ですね。そのためこのドラマでは「家事労働の対価」が大きな話題になりました。
 もちろん、このドラマは妻と称する女性に家事の対価としての賃金を支払うだけの余裕のある収入を得ている独身男性が主人公になっているので、そのような経済力のない男性には、あまり関係のあることではないでしょう。しかし、妻を専業主婦としている夫や、専業主婦として忙しい毎日を働いている妻にとっては、いろいろ考えさせることになったようです。

 ドラマの中で独身男性、つまり契約夫が対価を試算したときの台詞は次のようなものだったそうです。
「試算してみたんです。家賃、水道、光熱費等の生活費を折半した場合の収支。食事を作ってもらった場合と外食との比較。毎週家事代行スタッフを頼んだ時との比較。そしてOC法に基づいた専業主婦の家事労働時間は年間2199時間になります。それを年収に換算すると304万1000円。そこから時給を算出し、1日7時間労働と考えたときの月給がこちら。契約妻の生活費を差し引いた手取りがこちらで、健康保険や扶養手当を利用した場合の試算をしてみました。」
この結果、月給は19万4000円ということです。

ところで、台詞にでてくる「OC法」とは、内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部で無償労働の貨幣評価をおこなう際に用いる算出方法の一つで、機会費用法(Opportunity Cost method)というものです。説明によれば「家計が無償労働を行うことによる逸失利益で評価する方法である。無償労働を行った者の賃金率を使用するため評価額には、男女間の賃金格差などが反映し、無償労働の内容ではなく、誰が無償労働を行ったかで評価が変わりうる。賃金換算の際には厚生労働省:賃金構造の基本統計調査の産業計(性別・年齢階層別)所定内平均賃金率を用いる」とされています。
つまり、性別による賃金率を採用するということは、日本における男女賃金格差をそのまま採用するので問題があるのです。ちなみに、2014年(平成26年)の賃金センサスをみると、35歳の男性の平均賃金は年収(毎月決まって支給する現金額+年間賞与額・その他特別給与額)にして527万6100円、25歳の女性のそれは341万9300円です。なお、35歳の女性の場合の年収は381万9700円ですから、相当に男女格差があります。
なので台詞で「年収に換算すると304万円」というのは、賃金額が男性よりも低い女性の場合、つまり女性差別を前提とした数字でしかありません。

もうひとつ、台詞で出てくる「専業主婦の家事労働時間2199時間」ですが、年間2199時間の労働は結構長いのです。厚生労働省の「女性労働の分析−2015年」によると、女性常用労働者1人平均月間総実労働時間(所定内労働時間+所定外労働時間)は124.8時間、男性の場合には160.7時間です。これを1年間に換算すると、女性は1497時間、男性は1928時間となって、年2199時間の労働は男性の労働時間よりも約270時間も長い長時間労働なのです。契約夫と契約妻は36協定も結ぶ必要がありますね。しかも、労働基準法では、時間外労働をした場合には割り増し賃金が支払われることになっているので、単純に時給×労働時間という計算は間違ってることになります。

なお、平成25年6月に公表された内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部の「家事労働等の評価について−2011年データによる再推計」では、2011年の無償労働の貨幣評価額について、「OC法では女性の場合、専業主婦の無償労働評価額がもっとも高く、1人当たり年齢平均では304,1万円。1人当たり無償労働時間は、女性の場合、専業主婦は2199時間」と記載してあるので、ドラマでは、この論文を参考にしているものと思います。

また、上記の契約夫の台詞では「1日7時間労働,年間2199時間」と言っているので、計算してみると、2199時間÷7時間=年間314日働くことになっています。週休完全2日の企業が多いことを考えると、1年間53週のうち夏季休暇や年末年始休暇などを除外しても、2日×53週=106日は休日ですから、年間の労働日数は365日−106日=259日しかありません。つまり契約妻が働くことを予定されている年間労働日数314日というのは、休日労働することを予定されている日数なのですね。
なお、1時7時間ではなく1日8時間労働で計算したとしても、年間274日働くことになるので、やはり休日労働が予定されていることになります。

また住み込みであれば、実際に1日7時間という区切りが困難で、例えば、契約夫が残業で帰宅が遅くなり夕食時刻が遅くなるとか、夜中に病気になったときには医者に連れて行き看護するなどの場合も想定できます。またこのドラマでは子供はいないので、仮に契約夫に子供がいて育児の必要性があることなども考えると、育児の評価もしなければなりません。家事労働の評価は本当に難しいですね。
女性の多くが担っている家事労働をどのように可視化して、経済的評価をするべきなのでしょうか。これからきちんと議論されるべきだと思います。

ただ、私にはこのドラマの題名「逃げるは恥だが役に立つ」という意味が分からず、調べたところ、ウィキペディアには「恥ずかしい逃げ方だったとしても、生き抜くことが大切」という意味だと書いてありました。しかし、このドラマの2人の生き方のどこが恥ずかしいのか私には分かりませんでした。
以 上
posted by 金山総合法律事務所 at 14:40| 両性の平等

2017年05月22日

保育園の現状

      保育園の現状
                                     弁護士 渥美玲子

2016年2月に「保育園落ちた、日本死ね」という強烈な印象を与えたブログが世に知られ、国会でも取り上げられたうえ、2016年新語・流行語大賞にまで選ばれました。
そこで保育園について見てみました。

 少し遅い情報ですが、厚生労働省は今年1月、昨年2016年の1年間に生まれた子どもの数が98万1000人だったと発表しました。
 この出生数が100万人を割ったのは、なんと統計を取り始めた1899年以降初めてのことだそうです。ちなみに2014年は100万3539人、2015年は100万5677人だったそうで、一旦、増加はしたものの、基本的には減少傾向は収まらないと予測されています。

他方、待機児童問題については、厚労省は、今年2017年4月「保育所等関連状況の取りまとめ及び待機児童解消加速化プラン」を発表し、2016年4月現在保育所等定員は263万人で前年比10万3000人増加したこと、待機児童数は2万3553人で前年比386人増加したことなどの報告をしました。

ところでこの「待機児童」の厚労省の定義は揺れ動いており、2001年には、狭く定義されるようになり、「他に入所可能な保育所があるにもかかわらず待機している児童や、地方単独保育事業を利用しながら待機している児童」については除外することになりました。そのため、2001年4月の統計は2種類でており、新定義では待機児童が2万1000人となったものの、従来の定義では3万5000人とされました。なお、地方単独保育事業とは、無認可保育所ではあるが地方自治体の基準を満たしており、一定の援助を受けている保育所をいうそうです。

実は、昨年からもう一つの定義の必要性が言われています。それは「潜在的待機児童」「隠れ待機児童」の存在です。昨年の2016年9月厚労省は、統計から除外されている「潜在的待機児童」が昨年2015年より8000人多い6万7354人いたと発表しました。
この潜在的待機児童とは、親が育児休業中で保育園の入所申請をしていない場合、親が育児のために無職で求職活動をしていない場合、親が特定の保育所を希望しているため自治体の勧める保育所に入所申請していない場合、自治体の認可保育園に入りたいのに無認可保育園に入れている場合などを言います。このようなケースは、厚労省の定義からも除外されているうえ、自治体により定義が異なるので全国的な状況把握ができていないのです。
厚労省は以前からこのような潜在的待機児童について把握しており、「定義の見直し」を2017年4月から行う予定でしたが、今年はそれを行わず、来年2018年4月以降に集計する分からにするそうです。

ところで、少子化が進んで子どもの数が減っているのに、どうして保育所が不足しているのか、という疑問があるようです。
 その答えは、やはり厚生労働省が発表したグラフを見れば分かります。
1980年から2016年までの専業主婦世帯と共働き世帯の数を出したグラフがあります。
 1980年から1992年頃までは専業主婦世帯が共働き世帯よりも多かったのですが、1996年頃からなんと共働き世帯の方が多くなっています。私はこれを勝手に「X型グラフ」と呼んでいますが、まるで、1992年頃から1996年頃に2つの線が交差するかのように入れ違っているのです。1980年頃は専業主婦世帯が1100万世帯以上、共働き世帯が600万世帯だったのに対し、2016年には共働き世帯は1129万世帯であるのに対し、専業主婦世帯は664万世帯になり、完全に逆転しました。
このことは女性の雇用者数をみても明らかで、厚労省の調査では、1980年には女性の雇用者数は1354万人(全雇用者数3971万人の34%)だったのに対し、2016年にはなんと2531万人(全雇用者数5729万人の44%)に増えているのです。
このように1990年代から特に共働き女性が増えたため、子どもを保育所に預ける必要性が大きくなったのです。

しかも働いている女性は十分な賃金を貰っているかと言えば、そうでもありません。
例えば、2015年の総務省調査をみると、全雇用者数5474万人のうち、短時間雇用者は1634万人(全雇用者の約30%)いますが、その1634万人のうち女性は1110万人(全短時間雇用者の67.9%)なのです。時給については地域によってばらつきがあるようですが、愛知県では平均時給967円となっていて全国平均975円よりも安くなっています。ただし私が見た感じでは時給850円でパートを募集している店舗も結構あるようで、愛知県の最低賃金845円とほぼ同額です。
 ちなみに厚労省の統計では短時間雇用者というのは、「1週間の就業時間が35時間未満の者」とされているので、週休2日の会社の正社員の週の所定労働時間と同じですね。
2008年にアメリカでおきたリーマンショックの影響を受け日本の経済は大きな打撃を受けました。さらに2012年に発足した安倍内閣は大企業や富裕層優先のトリクルダウン理論を柱とするアベノミクス政策を強行し続け、日本の経済はデフレ不況が続いたままです。そのため日本の貧困率は世界4位というありがたくない地位を占めることになりました。
女性が働かないと生活はやっていけないのが現状なのです。
このような事情から働く女性にとっては保育園は不可欠なので、結婚する頃から家の近くに保育園があるかないか気にしたり、妊娠が分かったときから認可保育園探しを始めたり、いろいろな保育園の評判を調査したり、今は「保活」と言われていますが、本当に大変なのです。
「子どもができたら仕事をやめればいい、と考えている女性は少数派」が実態なのです。

ちなみに今年2017年5月18日、名古屋市は、「今年4月1日現在、国の定義に基づく待機児童は0人だったが、特定の保育所等の利用を希望されている等により保育所、認定こども園、地域型保育事業が利用できていないわゆる隠れ待機児童が715人となった」と発表しました。この715人という数字は昨年の585人よりも増え、2割増しになっています。
posted by 金山総合法律事務所 at 15:38| 両性の平等

2016年11月11日

日本は111位

          日本は111位

2016年10月26日、世界経済フォ−ラム(WEF)が「国際男女格差レポート2016」でジェンダーギャップ指数を発表しました。
丁度3年前に「日本は105位」ということで書きましたが、ランキングが上昇するどころか、6つも下がったのです。なんということでしょうか、
つまり、2016年、日本は144ヶ国中111位でした。

上位10位を見ると、1位アイスランド、2位フィンランド、3位ノルウェイ、4位スウェーデン、5位ルワンダ、6位アイルランド、7位フィリピン、8位スロベニア、9位ニュージーランド、10位ニカラグアで、北欧諸国が上位にランキングされています。
2016年5月に伊勢志摩サミットに集まったG7で見てみますと、ドイツ13位、 フランス17位、イギリス20位、カナダ36位、アメリカ45位、イタリア50位となっています。G7の中で日本は最低、しかも100位以下という悲惨な状況ですから、G7の仲間に入る資格はないと言えそうです。
 日本の順位を経年的にみると、2006年80位、2007年91位、2008年98位、2009年101位、2010年94位、2011年98位、2012年101位、2013年105位、2014年104位、2015年101位、そして2016年は111位という最悪の順位になりました。つまり日本の女性の地位は良くなっているどころか、悪くなっているのです。
つまり日本の男女格差の状況は、世界的比較で見ても、また経年的にみても最悪な状況になりました。

この指数は、男女格差が存在する4つの分野(経済活動の参加と機会Economic Partipation and Opportunity、教育Educational Attainment、健康と生存Health and survival、政治的影響力Political Empowerment)において男性と女性の格差をそれぞれ各国毎に分析したものです。
2016年の日本の総合ランクは111位ですが、経済活動の分野では118位、教育の分野では76位、健康と生存の分野では40位、政治的影響力の分野では103位でした。
この4つの分野にはさらに14項目の指標があります。経済の分野では「推定勤労所得Estimated earned income」が100位、「議員・政府高官・経営者Legislators,senior officials and managers」が113位、「専門的技術的労働者professional and tecnical workers」が101位、教育の分野では「高等教育Enrolment in tertiary education」が108位、政治の分野では「国会議員女性割合Woman in parlament」が122位という状況でした。
特に最低ランクの「国会議員女性割合」について平成28年の内閣府の発表によれば、平成27年12月末現在、衆議院では9.5%(45人)、参議院では15,7%(38人)という低さでした。また国家公務員の女性割合は本省課室長相当職が3.5%、指定職相当が3%、となっています。これでは女性の意見が政治に反映されないのは当然のことでしょう。

 このような日本の状況に比べてイタリアの状況は素晴らしいものです。2006年のランキングは77位と、日本の80位とほとんど同じだったのに、2016年にはなんと50位まで上昇しています。
 イタリアの2016年の4つの分野をみると、経済活動の分野では117位、教育の分野では56位、健康と生存の分野では72位、政治の分野では25位です。
経済活動の分野では日本は118位ですから、イタリアでもほぼ同じように男女格差があるといえますが、政治の分野では日本の103位と比べるとイタリアは日本より80ランクも上です。特に政治の分野では、イタリアは国会議員女性割合は39位、大臣女性割合は10位という高位にあります。
なお、2015年のIPU版(列国会議同盟)の「国会の女性割合ランキング」では、189ヶ国中、イタリアは38位で30.109%(286人)であるのに対して、日本は147位で11.60%(83人)という統計があります。

このように世界ランキングを検討することによて、どのような法律や制度にしたら良いのか、どのような慣習を変えるべきなのか、次第に分かってきますね。    弁護士 渥美玲子
posted by 金山総合法律事務所 at 13:13| 両性の平等

2016年08月11日

働く女性と法律(その2)

「均等法」の成立

 皆さんご存じの均等法について話したいと思います。
一口に「均等法」と言っていますが、実は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇に確保等に関する法律」というのが現在の法律の正式名称です。

この法律は、1985年(昭和60年)5月17日に成立し、翌1986年(昭和61年)4月1日から施行されました。
ところで、あまり知られていないのですが、均等法は、1972年(昭和47年)に成立した「勤労婦人福祉法」という法律を改正するという手続で成立しました。なので六法をみると、「昭和47年7月1日施行」と書いてあります。このような改正手続もあったためか、1985年に成立したときには、均等法の正式名称は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」というものでした。

法律の名称や趣旨、内容がまったく異なるにもかかわらず、「改正」という手続でおこなわれるというのは、違和感を感じますが、実は今の「日本国憲法」も「大日本国憲法」の改正手続によって成立しました。
 日本国憲法の冒頭には「朕は日本国民の総意に基づいて新日本建設の礎が定まるに至ったことを深く喜び、枢密顧問の諮詢及び帝国憲法73条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。」と書いてあります。
 現在の憲法はアメリカ合衆国による押しつけ憲法だ、という意見もあるようですが、そうすると、当時天皇が深く喜んで裁可したこと、枢密顧問が諮詢したこと、帝国議会が議決したことなどのすべての手続はアメリカによる押しつけだということになります。

  均等法に話を戻しますと、1960年代には女性労働者に対する差別が大きかったことから労働組合や女性市民団体などから「雇用平等法」を制定せよという大きな要求がありました。女性が働き続けたいと希望しても、当時の多くの企業は「結婚退職制」「30歳定年制」などの就業規則を作って女性を職場から締め出していましたし、賃金も男性に比べて半分以下程度でした。もちろん女性が昇格昇級することはありませんでした。
しかし、政府や財界はこのような女性の要求を無視し、多くの反対があるにもかかわらず次のような均等法を成立させました。
この均等法の問題点はいろいろありますが、第1に、「平等」といっても待遇や労働条件の平等ではなく、単に「機会の均等」でしかないこと、第2に、事業主に対しては「努力義務」しか課さなかったことから、均等法に違反した事業主に対して女性労働者はなにもできないことになったこと、第3に、このような均等法の成立とひき替えに労働基準法の時間外労働や深夜労働など労働時間についての女性保護規定が撤廃されたことなどです。
 要するに女性労働者は、「保護」を失い「平等」は確約されないままになったのです。

ところで私の手元に日本弁護士連合会が1983年(昭和58年)10月に発行した「男女が平等に働くために〜雇用平等法の制定に向けて」という150ページに及ぶ冊子があります。その21ページに「男女雇用平等法要綱試案」が掲載されています。これは「試案」ですから、結局は日の目を見ることはなかったのですが、当時日本弁護士連合会がどのように考えていたか良く分かります。

第1条の「目的」にはこのように書いてあります。
「この法律は男女平等を基礎とし、女性の労働権が、人間としての尊厳を確保するために欠くことのできない基本的人権であることにかんがみ、雇用の機会と待遇について、使用者等が女性を差別的に取り扱うことを禁止するとともに、その差別的取扱いによる権利または利益の侵害から女性を迅速かつ適正な手続により救済するため必要な措置を講ずることにより、雇用における男女平等を促進することを目的とする。」

第2条の「差別的取扱いの定義」には、このように書いてあります。
「第1項 この法律において女性に対する差別的取扱いとは、次の各号をいう。
1,女性であることを理由として不平等または不利益な取扱いをすること。
2,女性に対してのみ年令、未婚・既婚の別、子どもの有無、学歴、容姿等特定の条件を理由として不平等または不利益な取扱いをすること。
3,女性のみに適用される条件でなくても、女性のみを排除し又は女性のみ不利益をうける結果となる条件を設けて不利益な取扱いをすること。
4,労働基準法等法令に定められた女性に対する保護の権利行使を理由として、不利益取扱いをすること。
第2項 労働基準法等法令に定められた女性に対する保護並びに男女平等を促進するための特別の措置は、差別的取扱いとはみなさない。          」

 少し飛ばして、
第7条の「罰則」には、このように書いてあります。
「次の行為に対する罰則規定をもうけ、1及び2は両罰規定とし、違反行為を行った者を罰する他その事業主をも罰する。
 1,この法律で禁止された差別的取扱い
 2,調査及び審問手続に関する違反行為
 3,確定した救済命令違反 」

ここまで読むだけでも、1985年に成立した「均等法」が、如何に女性達の要求したものと異なっていたか、十分に分かるのではないでしょうか。
弁護士 渥 美 玲 子
posted by 金山総合法律事務所 at 12:55| 両性の平等

2016年07月30日

「女性が輝く」って?

            「女性が輝く」って
                                   弁護士 渥美玲子
 2016年4月13日に発売されたHKT48(AKB48の博多HaKaTaにおける姉妹版)の新曲「アインシュタインよりディアナ・アグロン」の歌詞が女性蔑視だとして話題になっています。
その一部をみると、次のような歌詞。

難しいことは何も考えない。頭からっぽでいい。
女の子は可愛くなきゃね。学生時代はおバカでいい。
テストの点より瞳の大きさが気になる。
どんなに勉強できても愛されなきゃ意味がない。
世の中のジョーシキ何も知らなくても、メイク上手ならいい。
女の子は恋が仕事よ。ママになるまで子どもでいい。
それより重要なことは、そうスベスベのお肌を保つことでしょう?
もっともっと輝きたい。人は見た目が肝心。
だってだって内面は見えない。
可愛いは正義よ。

 まあ、よくある女性に対する考え方ですね。
 1962年には早稲田大学の男性教授が「文学部は女子学生に占領されていまや花嫁学校化している」として「女子学生亡国論」を展開しました。要は、「女性に大学のような高等教育を受けさせても意味がない、国費の無駄だ」という論調でした。
 1975年頃には司法試験を合格した女性修習生に対しても男性教官からの差別発言はありました。例えば「男が生命を賭けている司法界に女を入れることは許さない」「任官すれば当然転勤のことがでてくるが、それについて女性は甘く考えているんじゃないか」などでした。
 近いところでは、2015年8月には鹿児島県の男性知事が、高校教育のあり方を考える教育会議の席上で「サイン、コサイン、タンジェントを社会で使ったことがあるか女性に問うと、10分の9は使ったことがないと言う。そのようなことを教えてなんになるのか。女性にとってはサイン、コサイン、タンジェントよりも、世の中の草花の方が将来の人生設計において有益かもしれない」との趣旨の発言をしたといいます。大学の理系に進学しなければ、男性でも三角関数などは仕事でも使うことはまずないと思われますから、「女性に問うと」などと限定する必要などはまったくないのです。むしろ将来文系に進むことを考えている場合には、高校教育において理系的な物の考え方を学ぶことは重要なのです。
また、2016年3月には大阪の中学校の男性校長が、全校集会で「女性にとって最も大切なことは子どもを2人以上産むことです。これは仕事でキャリアを積むこと以上に価値があります。」と発言しました。確かに出産は女性しかできないことです。しかし、「出産が仕事でキャリアを積む以上に価値があるかどうか」を決めるのは女性です。1994年カイロでの国際人口開発会議で「性と生殖に関する健康と権利」つまりリプロダクティブ・ヘルス・ライトが提唱され、この概念は「出産に関する自己決定権」として広く承認されています。女性は仕事を優先してもまったく構わないのです。女子生徒はどのような気持ちで校長の発言を聞いたのでしょうか。
今も昔も「女性はバカで良い」「女は家庭に入って夫の言うことに従っていればいい」ということですね。

ところで、この歌詞を読んで違和感を感じたのは「もっともっと輝きたい」というフレーズです。「頭空っぽで常識がなくても、メイクが上手でお肌スベスベで可愛い」という状態にあることが、「輝いている」って言うことかしら、と思ってしまいます。

最近、安倍首相は「すべての女性が輝く社会を作る」と言っていろいろな政策を掲げています。
 例えば、2014年10月に「すべての女性が輝く社会づくり本部」が纏めた「すべての女性が輝く政策パッケージ」によると、「女性が輝くことは、暮らしやすい社会、活力ある社会をつくることにつながる。子育てがしやすい、安心して介護ができる、ライフステージに応じた柔軟な働き方ができる、家庭や地域に十分関わることができるなど、女性の視点から見て暮らしやすい社会の制度や仕組みを作ること」だと説明しています。その上で、6つの政策の第1番目が「安心して妊娠、出産、子育て、介護をしたい」という女性の要望をかなえるための具体的な政策となっています。
 これって、結局、「女性は結婚して出産して子育てして両親の介護をすること」が、「女性が輝く」という一番の意味だと安倍首相は思っているということですね。
 ちなみに「アインシュタインよりもデイアナ・アグロン」の歌詞を書いたのは秋元康という有名な人物ですが、安倍首相のお気に入りだそうです。

なお、この秋元康の歌詞が女性差別だと批判した「リテラLITERA」というサイトに対して、AKB運営会社から、「名誉毀損及び侮辱罪が成立する。」との抗議が来たそうです。
                        2016年5月20日:記
posted by 金山総合法律事務所 at 16:24| 両性の平等

2016年06月09日

働く女性と法律(その1)

                              弁護士 渥美玲子

厚生労働省が昨年2015年の10月に、「働く女性の実情」を発表しました。
 これによると、平成26年における女性雇用者数は昨年に比し30万人増えて2436万人となり、雇用者総数5595万人の43.5%を占めるようになりました。女性の多くが働いていると言っても過言ではありません。
 しかし、その内実をみると、女性の非正規雇用形態が36万人も増えて1332万人になったということです。非正規雇用の内訳は、パート・アルバイト1042万人、派遣社員71万人、契約社員・嘱託177万人ということです。つまり女性労働者のうち、なんと56.7%が非正規雇用なのです。

 このように働く女性が増え、またその雇用形態も非正規雇用の割合が増えたことから、女性が働く上で知っておいた方が良い法律ははたくさんある、と私は思います。

 まずは、労働基準法です。縮めて「労基法」とも言います。

 この法律は1947年(昭和22年)4月に制定されましたが、その後、いろいろ改正されて、現在に至ります。労働関係を規律する基本中の基本の法律です。というのは、憲法第27条2項で「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は,法律でこれを定める。」と規定されていますが、労基法こそが、この憲法27条によって制定された法律だからです。

 労基法の「第6章の2」に「妊産婦」と題する条文があります。
 実は以前は「第6章の2 女子」となっており、女性労働者全員に対する時間外労働や休日・深夜労働の制限等による保護規定があったのですが、1999年(平成11年)にその規定が無くなって、「妊産婦」保護に限定されるようになったのです。

この「第6章の2」の対象は、労働契約を締結している女性労働者です。労働者とは「職業の種類を問わず,事業または事務所に使用される者で賃金を支払われる者をいう」(労基法9条)とされていますから、パートタイマー、アルバイト、契約社員、嘱託など呼称の違いを問いません。但し、派遣労働者の場合は労働契約を締結している派遣元企業に請求することになっています。
昔、相談に来た女性に、私が「なるぼど、あなたは労働者ですね」と言ったところ、「いいえ、私はパートなので労働者ではありません。」とその女性が答えたことがありました。今は、そのように考える女性は少ないと思いますが、「パートタイマー」はもちろん労基法9条の「労働者」ですから労基法の適用対象なのです。

ところで労基法の「第6章の2」の条文には次のようなものがあります。

64条の3:危険有害業務の就業制限
65条1項:産前休業中(6週間、多胎は14週間)は就業させてはならない。
65条2項:産後休業中(8週間)を就業させてはならない。
          但し産後6週間経過した女性が就業請求をした場合は別
65条3項:妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させなければならない。
66条1項:妊産婦が請求した場合、32条(の2,4,5)の法定労働時間をこえて労働させてはならない。
66条2項:妊産婦が請求した場合、33条、36条の規定にかかわらず時間外労働、休日労働をさせてはならない。
66条3項:妊産婦が請求した場合、深夜業をさせてはならない。
67条:育児時間

このようにいろいろな条文があっても使用者が守らない場合はどうなるのか、と言えば、結構厳しいことになっています。
労基法117条から違反した場合の罰則規定が定められています。
例えば、119条では、「64条の3から67条までの規定に違反した場合には、違反した者に対して6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処する」となっています。
この規定の意味は、違反者に対して単に損害賠償など民事的な責任だけではなく、いわゆる刑法犯と同じで刑事責任を負わせるということです。しかも、労基法121条では、違法なことをした者が管理職などであっても、会社など使用者も同時に刑事責任を負うことになっているのです。このような規定を「両罰規定」と言います。
では、なぜ罰則規定があるかと言えば、労基法自体が憲法27条を受けて定めされている「基本法」としての性格があるからです。労基法第1条1項には「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」とあり、さらに2項には「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この金を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」としています。このような労基法の基本理念を具体化し実効性を持たせるために罰則規定が設けられたのです。

女性の妊娠や出産に関する規定としては、均等法(正式には、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保に関する法律、といいます)や育児介護休業法(正式には、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律、と言います)などもありますが、これらの法律には使用者に対する罰則規定は非常に不十分なのです。
そういう意味でも労基法の条文について、労働者は、しっかり知っておくのが良いのです。

     以 上
posted by 金山総合法律事務所 at 16:37| 両性の平等

2013年11月05日

日本は159位

両性の平等
           

先回は、世界経済フォ−ラム(WEF)が「国際男女格差レポート2013」でジェンダーギャップ指数を発表し、日本は136ヶ国中105位になったことを書きました。
 実は日本にはもっと低いランクがあるのです。
 2013年3月に列国議会同盟(IPU)が発表した調査によれば、2012年の国会(二院制の場合は下院)における女性議員比率は188ヶ国中159位でした。

括弧内に女性比率を入れて、順位をみてみましょう。なおIPUの発表では同率の場合でも後順位を複数処理しないので、この点は変えました。

 上位10位の状況は、1位ルワンダ(56.3%)、2位アンドラ(50.0%)、3位キューバ(45.2%)、4位スウェーデン(44.7%)、5位セーシャル(43.8%)、6位セネガル(42.7%)、7位フィンランド(42.5%)、8位南アフリカ(42.3%)、9位ニカラグア(40.2%)、10位アイスランド(39.7%)となっています。
さらには、11位ノルウェイ(39.6%)、12位モザンビーク(39.2%)、13位デンマーク(39.1%)、14位エクアドル(38.7%)、15位オランダ(38.7%)、16位コスタリカ(38.6%)となっており、めぼしいところでは、21位スペイン(36.0%)、29位ドイツ(32.9%)、34位イタリア(31.4%)、44位フランス(26.9%)、64位中国(23.4%)、68位イギリス(22.5%)、83位パキスタン(20.7%)、97位アメリカ(17.8%)、124位ロシア連邦(13.6%)、そして、日本は159位(8.1%)だそうです。
そして世界の平均は20.3%だそうです。
 IPUによれば、ルワンダなど上位国において近年の女性議員が増加している原因はいわゆるクオータ制の導入によるものと分析されています。
 1位になっているルワンダの下院は80議席中、女性は45議席を持っています。しかし、80議席のうち24席が女性特別枠、さらに3議席が青年障害者枠になっています。ですから45議席から24議席を差し引いた除いた残21議席は女性が男性と互角に戦い取った議席だということです。つまり2種類の特別枠を除いた議席は53議席ですから、仮に女性特別枠がなくても53議席のうち21議席は選挙にて勝ち取ったことになり、39.6%になります。立派なものです。
 なお、このランキングによれば日本の衆議院議員480人のうち女性は39人として計算されていますが、実は内閣府が発行した男女共同参画白書によると2012年12月当時の女性議員数は38人なので、7.9%になります。よって、7.9%で160位のボツワナが上がるので、日本は同順位の159位です。

ところで、先回紹介しました世界経済フォ−ラムのランキングでは、日本は総合105位であったのですが、政治的影響力の分野では118位でした。2012年のこの分野でのランキングでは111位だったのが、さらに118位に落ちたのは、昨年の総選挙で、大きく女性議員が減ったからです。
昨年2012年12月16日、衆議院総選挙が行われました。皆さん、ご存じのように、2009年の総選挙以来与党だった民主党が大敗し、自由民主党が大勝しました。この選挙で、それまで54人いた女性議員が16人も減り、38人になってしまったのです。民主党には女性議員が比較的多くいたのですが、自民党は女性議員を増やす考えがありませんでした。このように、どの政党が女性差別解消政策をとっているのかは重要です。
また、衆議院は全体で480議席ありますが、そのうち300議席は小選挙区で当選議員は1人に限定されます。残180議席は比例区で全国を11ブロックに分けて行われます。そして昨年12月の総選挙結果における女性比率をみると、小選挙区では300人の内女性は20人(6.6%)ですが、比例区では180人のうち18人(10%)が女性でした。このようにどのような選挙制度を採用するかによって、議員の女性比率は容易に変更できるのです。
現在自民党はわずか180議席しかない比例区をさらに減らすことを提案していますが、これが実現してしまったら、現在の日本の状況では、さらに女性の議員比率は少なくなることは必至であり、ランクはもっと下がるでしょう。

ちなみに安倍総理は、首相官邸のホームページで、「女性が輝く日本へ」と題して政策を発表していますが、その政策は、「待機児童の解消」、「女性役員・管理職の増加」、「職場復帰・再就職の支援」、「子育て後の企業支援」の4つしかなく、国会における女性議員数の増加や、女性の政治に対する影響力の増加などまったく視野にないようです。

なお、ランキング表は誰でもネットで見ることができます。

                         弁護士 渥 美 玲 子
posted by 金山総合法律事務所 at 14:23| 両性の平等

2013年11月02日

日本は105位

両性の平等
              

2013年10月25日、世界経済フォ−ラム(WEF)が「国際男女格差レポート2013」でジェンダーギャップ指数を発表しました。
日本は136ヶ国中105位でした。
上位10位を見ると、1位アイスランド、2位フィンランド、3位ノルウェイ、4位スウェーデン、5位フィリピン、6位アイルランド、7位ニュージーランド、8位デンマーク、9位スイス、10位ニカラグアです。
 ちなみに先回、「外国の憲法にみる家族条項」を検討しましたので、各国の順位をみてみますと、ドイツ14位、アメリカ23位、フランス45位、ロシア連邦61位、中国69位、イタリア71位です。日本が105位というのが如何にかけ離れて低位か、一目瞭然ですね。
また世界ランキングが100位以下の国を見ると次のようになっています。
 100位カメルーン、101位インド、102位マレーシア、103位ブキナファソ(西アフリカにあります)、104位カンボジア、105位日本、106位ナイジェリア、107位ベリーズ(中央アメリカにあります)、108位アルバニア、109位アラブ首長国連邦、110位スリナムとなっています。あのマララさんを狙撃したタリバンのいるパキスタンは135位です。日本とパキスタンとの違いは、日本とイタリアとの違いくらいです。

このジェンダーギャップ指数ランキングは2006年から毎年10月に発表されています。
 日本の順番を経年的にみると、2006年80位、2007年91位、2008年98位、2009年101位、2010年94位、2011年98位、2012年101位、そして2013年105位でした。つまり日本の女性の地位は良くなっているどころか、悪くなっているのです。
一体、どうして、このようにランキングが下がったのでしょうか。そして、どうしてせめてイタリアのレベル、つまり136ヶ国の中間点までくらいにはランクアップしないのでしょうか。このことを真剣に考えないと、日本の女性はいつまで経っても差別されたままです。

この指数は、世界の約136ヶ国を対象に、男女格差が存在する4つの分野において男性と女性の格差をそれぞれ各国毎に分析したものです。評価の対象となった136ヶ国は、世界中のすべての国ではなく、世界人口の93パーセント以上を占めているそうです。また指数とは、国と国の格差ではなく、男性と女性との格差を問題にしていますから、男性を100として女性がどの程度平等であるかを計数化しています。

まず4つの分野とは、第1に、経済活動の参加と機会(Economic Partecipation and Opportunity)、第2に教育(Educational Attainment)、第3に健康と生存(Health and Survival)、第4に政治的影響力(Political Empowerment)の4つです。
 そしてそれぞれの分野には合計14の変数があり、経済活動の分野では、給与、参加レベル、専門職における雇用など5つの変数、教育の分野では初等教育や高等・専門教育への就学など4つの変数、健康と生存の分野では寿命など2つの変数、政治的影響力の分野では政策決定機関への参加など3つの変数があります。そしてこのレポートではそれぞれの分野ごとでのランキングも示しています。

2013年の日本の総合ランクは105位ですが、経済活動の分野では104位、教育の分野では91位、健康と生存の分野では34位、政治的影響力の分野では118位です。4つの分野のうち100位以下が2つ、90位以下を基準とすると3つもあるって、凄いですよね。愕然とします。

ところでこのようなジェンダーランキングはどのような意味があるのでしょうか。「たかが女のこと、自分には関係のないことだ」と思っている人が多いかもしれません。しかし、このような考え方は、日本の女性が差別されているという現状、つまり男性に比較して女性は経済的に自立していないということ、男性に比較して高等教育を受けていないということ、女性には政治的影響力がないということを容認しているということです。言い換えれば、女性に対する差別に対して改善の必要を認めないという考えであり、つまるところ、女性差別を容認しているものと言わざるを得ません。
 そして、そのよう女性差別意識は、女性以外の、子ども、障害者、高齢者、低所得者、外国人など社会的な弱者あるいは政治に対して影響力を持たない人間に対する差別意識をも含むと考えます。
 人間に対する差別を容認する社会が健全である筈はありません。
 このようなランキング表が、その国の健全性を検討する重要な指標になることは間違いありません。
日本は憲法の前文で「国際社会で名誉ある地位を占めたいと思う」と宣言しました。このジェンダーギャップランキングで、日本がこのような不名誉なランク付けをされたことについて一体政府はどのように考えているのか、聞いてみたいものだと思います。

 なお、このWEFのレポートやランキング表は誰でもネットで見ることができます。

                         弁護士 渥 美 玲 子
posted by 金山総合法律事務所 at 13:33| 両性の平等

2013年09月28日

明治民法〜 婚姻制度 (その2)

両性の平等
         

先回に引き続き「婚姻」について見てみましょう。

・「第788条
 妻は婚姻に因って夫の家に入る。」
この規定は、「家制度」と採用している当然の結果とされています。但し、外国人と婚姻した場合には配偶者の外国籍には入らないとして例外が認められています。

・「第789条
@妻は夫と同居する義務を負う。
A夫は妻をして同居させることを要する。」
この規定は「夫婦が同居しなければ、婚姻の目的をなすことができない」ということによる当然の規定とされています。しかし、この場合の同居義務は妻にのみあり、夫にはありません。梅教授は「夫が自己の便宜に従い妻と同居せず、仮にその請求が妻からあったもこれに応じないことは稀ではない。これは男尊女卑の因習によることであるが、今日の時勢にあってはこのようなことを是認できない」などと述べています。」

・「第790条
   夫婦は互いに扶養をなす義務を負う。」
梅教授によれば「夫婦は偕老同穴を約する者なるが故に、もし一方が資力なきため自ら井蛙KT得することができない場合には、他の一方がこれを助けるべきは理の当然とである」と書いています。なるほど、こういう場合には夫にも妻にも義務があるのですね。

・「第798条
 夫は婚姻より生ずる一切の費用を負担する。
   但し、妻が戸主たるときは妻が負担する。」
梅教授によれば「夫は一家の主宰にして、その戸主たる場合はもちろん、戸主でない場合においても夫が財産を有してこれをもって妻子を養うのが通例としているので、婚姻より生じる費用は原則として夫の負担とするもは当然である」としています。

・「第801条
 夫は妻の財産を管理する。」
梅教授によれば「財産の管理は夫が概して妻よりもこれをするに適している者であるが故に財産に関する重大な行為は妻は夫の許可を受けるものとした。これはもとより夫権を重んじた結果である」と説明しています。

・「第802条
   夫が妻のために借財をなし、妻の財産を譲渡し、これを担保に供し、第602条の期間を超えてその賃貸をなすには妻の承諾を要す。」

このように結婚すると妻は自分の財産についてさえも夫に管理どころか処分されてしまうという大変不利な状況に置かれます。すでに明治民法の総則編の第14条、16条などで見たようにそもそも妻には行為能力がないとされているので、801条や802条の規定は当然のことです。

・「第808条
   夫婦はその協議をもって離婚をすることができる。」
梅教授によれば「婚姻はもともと当事者の契約によるので、その契約を解消することができるのは理の当然である」としています。

・「第813条
 夫婦の一方は左の場合に限り離婚の訴えを提起することができる。
1,配偶者が重婚をなしたるとき
2,妻が姦通をしたとき
3,夫が姦通罪によって刑に処せられたとき 」
4,配偶者が偽造、賄賂・・関する罪、若しくは刑法75条・・の罪によって刑に処せられたとき
5,配偶者より同居に堪えざる虐待または重大な侮辱を受けたとき
6,配偶者より悪意をもって遺棄されたとき
7,配偶者の直系尊属より虐待または重大な侮辱を受けたとき
8,配偶者が自己の直系尊属に対して虐待をなしまたはこれに重大な侮辱を加えたとき
9,配偶者の生死が3年以上分明ならざるとき

この条文の2項と3項を比較すると、一見して妻の方に重い責任が課せられていることが分かるので、女性に対する差別だと思われます。この点につき、梅教授は次のように説明しています。「妻が婚姻より生ずる第1の義務に背くことであるから、これが離婚の原因とされるのは当然である。ただ、妻に限りこの義務を負わせ夫に同一の義務を負わせないことは不公平であると言わざるを得ない。我が邦においては従来法律上の妻の外に妾なるものを認め、これをもって2等親族とするに至っていたので、俄に欧米の進歩した主義を採用することができない。この不公平は遠くない将来において必ず廃止せられるべきであると信じている」というものです。しかし、この条文は昭和22年まで生き続けていました。
この条文の5項についても梅教授はおもしろいことを書いています。「例えば、中等以下の社会にあって夫が軽く妻の臀部を打ちたるが如き行為は敢えて本号に入らないと言えるが、妻が夫に対して同一の所行をなすと、これは重大な侮辱を加えたものとして離婚を請求することができる。しかし社会の進歩するに従って世論はこのような区別を認めないようになるだろう。また例えば、現今においては夫が妻と同居する場合においてその家に妾を蓄えるも妻は本号の適用によって離婚の訴えを提起することができないことが多いと思うが、社会の進歩するに従って、必ず本号の適用あるものとするに至るべきだ。」
 つまり、離婚原因は社会の発展や進歩に従って変化するものであると認めているのですね。

                          弁護士 渥 美 玲 子
posted by 金山総合法律事務所 at 15:34| 両性の平等